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若手先生方の悩み [学校と子ども]

多忙でしばらくブログから離れていました。予期せぬメインテナンスもありましたね。今日もあまり時間がないので、自分で考えたテーマはまたの機会にして、「青年教職員の悩み」というアンケート調査の結果を紹介します。

これは当県の教職員組合(全教)が、昨年6〜7月に実施したもので、1〜3年目の教職員を対象に質問しています(匿名)。希望を抱いて就職し、フレッシュな目で学校や子どもたちを見ている若手の先生が、どんなことに悩んでいるのか、率直に書かれているようです。

●仕事に関して一番の願い
・ゆとり教育といわれる中、教師にもゆとりを。35人以下学級を全学年へ。教師の配置にゆとりがほしい。
・もっと能力のある人を校長にしてほしい。守秘義務と言ってすべて自分だけでしたり、大事な情報を他の教職員に報告しなかったり、行政職は会議に出るなと言ったり・・・。そんな人が校長ならいくら能力のある教員が揃っていてもダメです!もっと管理職の質を上げてほしいです。
・子どもの心を熱くさせるようになりたい。子どもに直接関係しないような事務仕事をもっと早くできるようになりたい。
・生徒が希望を持っていろいろなことにとりくみ、よりよい成長をとげてくれること。
・子どもが一人の人間として生きていくために必要な教育や支援をしていきたい。
・土日の部活動が毎週で、ある程度理解、覚悟はしているとはいっても苦痛である。平日の生徒指導、授業をしっかりしたいが、土日の件があり、疲れが先に立ち、中途半端にならないか毎日が不安。土日でストレスが抜けないために、平日に余裕(心身共に)をもって仕事にとりくめない。
・もっと自分を成長させたい。楽しく仕事をやっていけたらいい。もっと自分を好きになりたい。先生たちも事務ももう少し余裕があるといいと思う。
・先輩教員に新採教員や若い教員を育てる余裕や気持ちをもってほしい。
・子どもたちが科学的にものを見られるような力を授業でつけたいが、教材研究の余裕がなく、場当たり授業になっているので何とかしたい。
・養教の研修などの場がもっと増えるといい。でも、ふだん学校を出て研修などには出にくい現状がある。
・通勤片道2時間からせめて片道1時間くらいまでの学校にしていただきたい。心身共に本当につかれています。
・自分らしく教職員生活をつづけていけることです。将来の子育てとの両立や、趣味や研修を受ける余裕の確保など。
・とにかくこんなに出張研修が多いと子どもと触れ合えません。
・定時に帰れるようになりたい。
・やすらぎがほしい。スペースがほしい。
・一人一台コンピューターが使用できるようにし、事務連絡や配布書類はできる限りメールで行う方が効率がよい。私立学校ではそのように行っているところも多い。

●毎日の仕事で困っていること ・子どもたちとの関係で困っている。(4)
・職場の先生方との関係で困っている。(4)
・保護者との関係で困っている。(3)
・その他(9)
 ・時間的な余裕がなく困っている
 ・自分の仕事の遅さ
 ・自分が部活指導で十分アドバイスできないので、もどかしさを感じる
 ・毎日帰宅が11時。帰宅後も仕事をするので就寝は毎日2〜3時。翌日は5時に起床。車通勤なので睡眠不足で 困っている。
 ・ゆっくり休む余裕もなく、9時、10時まで働いているのが何とも・・・
 ・職務上の相談をすぐにしにくい。
 ・仕事、家庭、自分の健康をきちんと維持できず大変困っている。
 ・書類の書き方にときどき困る
 ・クラブ活動の負担が大きい。ほとんど一人で見ている。

●職場で改善してほしいこと
・勤務時間内に仕事が終えられるように改善してほしい。(11)
・給料や手当を改善してほしい。(5)
・計画書や報告書などの文書が多すぎるので改善してほしい。(3)
・出張や研修が多すぎるので改善してほしい。(8)
・その他
 ・教師に負担がかかっていることが年々増えてきていて、部活もきっちり見に行けないような状況がある。ましてや講師の先生が担任をして、教諭と同じように働いてもらっている。同じ待遇にすべきでは(例えばボーナス)
 ・研修などの旅費をもう少しまかなってほしい。東京日帰りなんて無理です。
 ・他をよく知らないので「こういうものか」と思っている。
 ・特殊勤務の部活動、4時以上という規定に
 ・職場の協力体制について
 ・休日出勤がつらい。数人の部活動顧問がいても意味がない。

●将来への不安
・自分の健康が維持できるか不安である(9)
・このまま教師続けられるかどうか不安である(6)
・教師に向いていないのではないかと考えることがよくある(4)
・その他(2)
 ・自分のいい部分を出せているか。
 ・社会に対する意識が遠ざかって、忙しい中で埋もれてしまいそう・・・。
*****************************
読むほどに、学校の先生方が心身ともにたいへんな状況に置かれていることが察せられます。若手の先生なので仕事に不慣れという点はあるかもしれませんが、データから見ても日本の先生方の勤務状況はたいへん厳しいもののようです。

次の文章は「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治氏という本から引用します。この本はフィンランドの教育が日本で注目される一つのきっかけともなった本でお勧めです(私もまだ途中ですが)。
「さらに注目すべきは、OECD調査(まい注:2002年)で「法定勤務時間に占める実際の授業時間の割合」という項目である。日本の教師は、最低に位置している。小学校では30%強、中学校では約25%、高校では10%強しかない。韓国は、それぞれ50%、約35%、30%強あって、日本の1.5倍程度、授業時間を割けることになっている。最も多いスコットランドになると、65から70%あって日本の倍以上である。法定勤務時間は、日本が1940時間、韓国が1613時間、スコットランドが1365時間である。フィンランドでは、勤務時間は年間1600時間、その60%が授業と説明されている」。

法定勤務時間そのものもかなり長いのですが、そのなかで書類仕事や部活など、授業以外に費やされる時間が膨大です。1月に県の教育委員会を傍聴した時(その時の記事はミスで消してしまいました)、会議で例の全国学力テストの結果分析をしていて、当県は全国平均に比べて全体的に低くないにもかかわらず、有意差の出ないくらい下回った問題を出してきて、「こういう力が弱い」などと言っていました。さらに「今年度中に(つまり3月末までです!)、各校に「学力向上計画」を策定させる」ことがあっけなく決まりました。どの学力がどう低いかもはっきりせず、もちろん原因についての議論もなしで、短期間に「学力向上策」を提出しろというわけです。こういう教委のレベルの高くない(と私には思えました)議論を聞いていると、上からの決定事項としてそのまま現場に降ろして、ただでさえギリギリのところで踏ん張っている先生方に対して、また一つ書類仕事を増やしてしまうというだけではないかと、たいへん疑問を感じました。

上記の本に書いているように、教師の本務は授業であり、授業以外の負担はできるだけ少なくするという原則を、日本でもきちんと考えてほしいものです。

おおもとには、教育費に対する国の支出が少ないという原因があるはずです。以前、ブログでも紹介しましたが、http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3950.html「学校教育費の対GDP費」の比較を見ると、「日本は第25位と学校教育費の対GDP比の水準は低い。ただし、私的負担の比率は対GDP比で1.2%となっており、低くはない。逆に公的負担の比率は3.5%と低く、ギリシャを除いてOECD最下位となっている。最近では格差社会論などとの関連で、教育費の社会保障的な側面、すなわち貧乏人でも良い学校へ行けるという機会の平等が日本では失われてしまっている証左として、こうした学校教育費の公的負担割合の小ささがあげられることが多い(広井良典「持続可能な福祉社会」ちくま新書、2006年、p.25、橘木俊詔「格差社会」岩波新書、2006年、p.180)」。


2008-03-03 22:57  nice!(1)  コメント(8)  トラックバック(1) 

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東西南北

 公務員は仕事が楽で高収入などという公務員リストラの攻撃には根拠がないということですね。

 失業の恐怖、倒産の恐怖を与えて生産力を上げる。受験制度で競争させて落ちこぼれに恐怖感、劣等感を与えて学力向上を図る。

 こんな競争至上主義を規制していく改革が必要です。民間活力民営化の行政改革の「構造改革」の圧力で教育も破壊されているんですね。

 
by 東西南北 (2008-03-04 00:54) 

ayu15

教育再生会議でも「予算少ない!」と言ってました。
by ayu15 (2008-03-04 10:07) 

mai

>東西南北さん
ありがとうございます。公務員といっても、教職、医療、介護、福祉の現場にいる方々は本当にたいへんでしょう。おっしゃるように、競争で心豊かな社会は作れないですね。競争や評価を導入した「改革」で最も壊れるのが教育や医療だと思います。本当に何とかしたいのです。相手があまりにも強大なので、どこからどう手をつけたらいいのかわからないような気もするのですが・・・。東西さんのお知恵を貸してください。

>ayu15さん
今回の予算案では非常勤の先生方の増員にとどまったように読んでいますが、さらに踏み込んだ教育予算の充実が必要ですね。
by mai (2008-03-04 15:27) 

女衒の辰

教師の方々のお仕事環境などについては全く何も知らないことばかりです。
30数年の会社員生活の経験から感じた事を列記します。
>・通勤片道2時間からせめて片道1時間くらいまでの学校にしていただきたい。心身共に本当につかれています
伊丹市の自宅から名古屋の会社まで毎日新幹線通勤していた同僚もいます。私も滋賀県から大阪の日本橋近辺まで2時間弱の通勤をしていました。片道2時間を嘆くのは甘えでしょう。長時間通勤が嫌ならそれに見合った仕事にすべきです。

>東京日帰りなんて無理です。
民間企業では、大阪からでも東京日帰り出張など常識です。問題はその出張が本当に必要なものかどうかでしょう。簡単な問題は出張せずテレビ会議で済ませていました。

>教師の本務は授業であり、授業以外の負担はできるだけ少なくすること。
この事は最も重要視しなければならないと素人なりに思います。授業をしっかり行う為の自己研鑽に時間を使って戴きたいものです。

最後に、最近改めて欲しいのは、評価制度に関してです。
教職員評価・育成システムや警察官の検挙ノルマなどは、その仕事に馴染まない仕組みだと考えます。それと同時に一般の会社でも過度の個人評価システムが職場でのいじめや足の引っ張り合いなどを招き、逆に会社の生産性を低下させている場合があります。皆で協力して成果を挙げるという日本の良いシステムが、アメリカの間違った仕組みを真似たことで崩壊したのではないでしょうか。
by 女衒の辰 (2008-03-04 21:49) 

mai

>女衒の辰さん
詳しく読んでいただき、どうもありがとうございます!
「教師の本務は授業であり・・・」これは大切なポイントですね。そのためには、規則で定めることは当然として、さらに先生方の心身の自由が欠かせないと思います。例えば、「教員は長い夏休みを取って怠けている」という批判があったりで、いまは原則として学校の長期休暇中も一般公務員のように出勤または研修しなくてはならなくなったようです。しかし、一部の本当に怠けている人は別として、長期休暇で得られるまとまった時間と精神的余裕によって専門領域の深い研鑽や教材研究ができていた人は数多く、いまではすっかり小粒になってしまって・・という話も聞きます。

何でもフィンランドというわけではないのですが(笑)、フィンランドでは「授業以外の時間は、教師は授業に向けて研修をしていることになっており、その時間の使い方は教師に任されている。ノートの点検やレポート評価、教材の準備など、学校でやってもよく、そうでなくてもよく、一番やりやすい場所ですればよい」として、受け持ち授業が終われば帰宅は自由だそうです。日本でもそのくらいの大らかさがあっていいのではないでしょうか。

通勤時間や日帰り出張については、ケースバイケースの面があると思います。確かに都会のサラリーマンでは2時間程度の通勤はザラですね。私もいまの仕事の前に全く違う職種で働いていたことがあり(たぶん女衒の辰さんにはお話ししていなかったと思いますが)1時間15分くらいかけて通勤し、締め切りに追われると職場に泊まり込みもしょっちゅうでした。

その後、いまの職種になったのですが、う〜ん、どう言いましょうか。ストレスの質みたいなものが違うのですね。会社員でも仕事によってさまざまだと思いますが、教育や医療、特にエネルギーの塊のような子どもたちから目を離せない教職は、先生自身が心身ともに健康でないと難しいと思います。

また、これも会社によると思いますが、私の場合、会社員といまの職(以前はもっと本格的にやっていましたので)を比べると、徹夜は続いても会社員時代の方が精神的にずっと楽でした。相手に合わせて自分のペースで仕事を進めることができず、常に相手の様子次第というのは、かなり精神的に堪えます。

長々と書きましたが、先生という仕事は心も体も充実した状態にあってこそ良い教育ができるのであり、普通の会社員(も、もちろんそうですが)以上に、労働条件の悪さは本人にも子どもたちにもマイナスに働くように思います。

それと、県単位の採用が多い(と思います)ので、若手の先生はいわゆる僻地に赴任させられるケースが多いようです。家庭を持ったりすると、希望も聞いてくれやすいと思いますが・・。長時間労働の後の長距離通勤は、人的資源の使い方としてももったいないかなあ〜と思います。

一般の会社でも年功序列から急激に成果主義に移行し、逆に生産性が落ちているところもあると聞きます。誰がどう公正に評価するか・・・など、よほどうまくしないと士気が落ちそうですね。日本型の良いシステムは温存して、少しずつ改良していくという方法が良いのではないでしょうか。
by mai (2008-03-04 22:40) 

mai

>shiraさん
ご訪問&nice、どうもありがとうございます。
現場にいらっしゃる立場から、いろいろと教えてください。
by mai (2008-03-05 09:49) 

shira

 何の仕事でも若いうちは未熟ですから修行が必要ですが、一番手っ取り早くていいのは場数を踏む=現場でいろいろ経験することだと思うんです。で、失敗やアドバイスは上司や先輩がフォローすると。
 ところが最近の学校はこれがやりにくいんですね。原因は
①仕事が増えて、ベテランが若手の面倒を見る余裕がなくなった。
②研修という名前で、若手が現場以外の場所に頻繁に引っ張り出されるようになった。
③研修の指導者は行政が決めるようになり、現場の同僚や先輩のアドバイスが不要品扱いされた。
④若手を含む現場の失敗に対して外部(マスメディアや保護者など)が寛大でなくなった。
⑤教育改革のたびに、授業以外の仕事がふえ、若手でなくても現場で生徒と接する機会が減っている。
 てなあたりでしょうかね。


by shira (2008-03-05 22:06) 

mai

>shiraさん
さっそく現場の状況を教えてくださり、どうもありがとうございます。
先輩、後輩、同僚同士など、現場でのつながりやアドバイスが大切なのですね。OJT(on the job trainingでしたでしょうか?)というところでしょうか。
先生同士が豊かな人間関係を築けたら、子どもたちにもすごく良い影響を及ぼせそうです☆


by mai (2008-03-06 20:33) 

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