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証拠は全部却下する・「教育基本法違憲訴訟」初回結審の驚き [教育基本法]

11月14日に、東京都民ら245名が「改正された教育基本法は違憲である」として、国や国会議員に損害賠償を求めていた、本人訴訟の裁判の結果が出ました。初回結審だそうです。

http://www.news.janjan.jp/government/0711/0711155678/1.php

*9月の提訴時の記事です。
http://www.news.janjan.jp/living/0709/0709222816/1.php

憲法では合憲性審査権というものが記されていて、第81条で最高裁判所に「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限」が認められています。

しかし、実際にはきわめて限定的にしか行われていません。それは最高裁判所が、早くから合憲性審査権を「米国憲法の解釈として樹立された違憲審査権を、明文として規定した」ものと解し、「具体的な争訟事件が提起されないのに・・・憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない」と述べて、憲法訴訟型で運用すべきことを明らかにしたからだそうです。

つまり
・憲法保障を目的とするヨーロッパ型
・国民の権利保障(私権保障)を目的とするアメリカ型

のうち、アメリカ型を取っているのです。

審査方法で言えば
・憲法裁判制度(独立審査型)
・憲法訴訟制度(付随審査型)
の後者です。

憲法訴訟制度とは、具体的な争訟事件を裁判することを目的とする司法裁判所が、その事件で問題となった適用法令の憲法適合性について判断を示すしくみをいい、合憲・違憲の判断は判決理由の中で示されるとのことです。

また、司法審査制においては、裁判所は具体的な訴訟事件の解決に必要なときのみ憲法判断をおこなうべきであるとする基本的な制度上の枠組み(必要性の原則)、こうした考え方の背後には、いわゆる司法消極主義、つまり司法裁判所は、民主的な統治組織の下では、議会・政府などの機関に対する敬意を払うべきであり、議会制定法に対する違憲審査権は抑制的に行使すべきであるという司法哲学(司法抑制論)があります。

******************************************
安倍内閣のような、どう見ても民主的でない統治組織の下で作られた法律の合憲・違憲性について、裁判所が判断することを放棄したら、いったいどこの機関が国民の権利(民主的な教育を受ける権利等)を守ってくれるのでしょうか。

さらに言えば、最高裁判所長官の指名、最高裁判所判事の任命権が内閣に存在し、下級裁判所裁判官の指名権を最高裁判所が持っている以上、どうやって司法の独立性が保たれるのか、非常に疑問を感じます。




2007-11-27 13:19  nice!(1)  コメント(7)  トラックバック(15) 

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コメント 7

tamara

裁判の模様を読んで頭がくらくらしました。こんなものだろうとは想像していましたが、最初から原告を馬鹿にし、見下しているような裁判が今の日本で行われている事に唖然とします。一体、どこの何時代の話か?という感じです。
文科省へのパブリックコメントを書こうと思っていますが、あの膨大な資料の内容もひどいですね。善いものも悪いものも何もかもごちゃまぜに入っていて、一見何を言わんとしているのかわからないようになっています。あの長い文章を誰が読む暇あるでしょうか。全く巧妙です。
by tamara (2007-11-27 21:02) 

mai

コメントありがとうございます。私は裁判には全く詳しくないのですが、弁護士さんのいない本人訴訟ということも関係しているのでしょうか。違憲立法審査権については、ちょうどいま勉強していたところなので、教科書から引用しました。
文科省へのパブコメの件には、私も全く同感です。名大教育学の植田先生にSOSのメールを出して、次のサイトを教えていただきました。「知里保さんというジャーナリストの方が運営しておられる“学習指導要領の改訂 どうなの”というHPがあります。URLは、http://www.hiho.ne.jp/chiri/です」ということです。
by mai (2007-11-28 19:25) 

mai

ごめんなさい。上のアドレスクリックしたら開けませんでした。
もう一度コピー&ペーストします。
http://www.hi-ho.ne.jp/chiri/
by mai (2007-11-28 21:39) 

おおくにあきこ

maiさん、非常に重要なお知らせをありがとうございます!
じっくりと読む時間がとれていませんが、学習指導要領には、いつかきちんと取り組まないとと、思っていました。
知里保さんのHPも貴重ですね!
by おおくにあきこ (2007-11-29 21:52) 

mai

>おおくにあきこさん
コメントありがとうございます!私も教育基本法が衆議院を通過したとき、もう本当に頭にきて、知り合いの弁護士さんに電話して訴訟を起こせないか尋ねました。答えはやはり「具体的な事例がないと無理だけど、何かあったら私もやりたい」とのことで、法そのものの解釈についての訴訟はいまの日本では難しいみたいですね。でも、訴訟を起こすことで問題提起する意味はあると思います。

文科省についてのパブリックコメントについては、tamaraさんも取り上げておられましたが、拙いものでも、一言でも、締め切りまでには出そうと思っています。学習指導要領について、またブログでもいろいろ教えてくださいね。
by mai (2007-11-30 17:47) 

hm

 ううむ。
 
 この問題は、憲法の定める違憲審査制のあり方論の問題に尽きますね。
 maiさんのまとめのとおり、そういう制度なので現状では仕方ないでしょう。

 では、ドイツ型のように、「憲法裁判所」を設置し、抽象的違憲審査制を導入するのがよいか?
 これは憲法改正論というくらい、かなり大きな問題で、確かにそれがうまく機能すれば、法の支配には役立つが、うまく機能するだろうかどうか。
 私も結論を持っていません。でも「憲法裁判所」は一考に値する、と思っています。まだ積極的に推進したい、というほどの考えまでもいきませんが。
by hm (2007-12-19 22:18) 

mai

>hmさん
うわあ〜、専門家のhmさんからコメントいただけるとは嬉しいやら恥ずかしいやらです。
私もたまたま勉強していた箇所だったので書いてみましたが、憲法裁判が良いものなのか、どうなのか、素人で判断がつきません。
ただ、立法が合憲なのかどうなのか、何らかのかたちで(裁判所でなくても)国民の総意として判断できるシステムが必要かなあ〜とは感じます。
by mai (2007-12-21 23:01) 

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