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自衛隊ヘリは負傷者を助けず&イラク市街の戦闘を思う [戦争と平和]

最近では、自衛隊の災害救助はよく報道されていて、これから書くような非人道的な性質は変わってきているのかもしれません(ぜひ変わっていてほしいものです)。でも、私たちは厚木基地での次のようなできごとを忘れてはならないはずです。
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津久井さんのブログより

「わたしたちはわすれない米軍機墜落事件」
パパママ・バイバイ
http://www.cityfujisawa.ne.jp/~t.a.arai/takashi/atugikiti/papamamabyebye.htmより
1,ジェット機が落ちてくるぞ 
 この事件が発生したのは、1977年(昭和52年)9月27日の事ですから、今からちょうど20年前の事になります。(中略)午後1時17分頃、米海軍厚木基地を離陸した米海兵隊所属RF−4Bファントムジェット機が相模湾沖を航行中の空母「ミッドウェー」に向かう途中、エンジン火災を起こし、荏田町の宅地造成地に墜落したのです。

2,助けを求める人たち 
 墜落地点一帯は全長19メートル、重量26トンの機体と大量のジェット燃料が飛散し、付近の公園と民家を飲み込んで一瞬にして火の海になってしまいました。
 炎上する家の中から、火がついた衣服をまとって大やけどを負って助けを求める女の人。血ダルマの幼子をしっかりと抱きかかえ飛び出す母親の姿がありました。
 その時の状況を被災者の救出活動に参加した人は「「たすけて−」と悲鳴をあげながら女の人がかけてくるんです。顔は火ぶくれでふだんの2倍ぐらいにはれあがり、髪は焼けちぢれ上着はボロボロ、わずかに下着がついている程度でした」と語っています。

3,自衛隊の救難ヘリコプターは 
 事件発生と同時に米軍から連絡を受けた自衛隊はすぐに救難ヘリコプターを厚木基地から緊急発進させ、事件発生の10分後には現地の上空に到着しました。
 しかし、救難ヘリは大やけどを負つて救助を求めている被災者を助ける事なく、墜落前にパラシュートで脱出し、ほとんど無傷で地上に降りた2人の米軍パイロットを乗せて厚木基地に帰ってしまい、再び飛んでくることはしませんでした。

4,「パパ ママ バイバイ」・裕一郎君と康弘ちゃんの死 
 火炎が広がり、黒煙がきのこ雲のように立ち上るなか、付近で仕事をしていた宅地造成工事現場の人達による必死の被災者救出活動が行われ、民間人の通報で救急車が到着2人の幼児を含む9人の重軽傷者が病院に運ばれました。
青葉台病院に収容された林裕一郎君(昭和49年8月24日生まれ・当時3歳)と、弟の康弘ちやん(昭和51年3月28日生まれ・当時1歳)は、全身大やけどを負い包帯でぐるぐる巻きにされ「水をちょうだい、ジュースジュース‥‥」と叫びましたが、容体が悪化するので水もジュースも飲ませてもらえませんでした。(中略)午後10時過ぎに、裕一郎君は「痛い いたいよう‥‥」「水、みずをちょぅだい‥」の叫び声の合い間に黒いどろどろした物を吐くようになり、急速に弱々しくなっていきました。
 「おばあちゃん、パパ ママ バイバイ‥」の声を残して裕一郎君が息を引き取ったのは、午前零時50分のことでした。弟の康弘ちゃんも嘔吐が始まり、父親の一久さんらの必死の励ましの中「ポッポッポ」と鳩ポッポの歌をかすかにうたいながら翌日、未明の4時30分幼い生命を閉じたのです。

5,二人の幼児の母親は 
 裕一郎君と康弘ちゃんの母親の和枝さん(当時26歳)も、全身8割にも及ぶやけどで昭和大学藤が丘病院に運ばれました。一方月以上も絶対安静の危篤状態が続きました。
 ようやく死の淵から脱した和枝さんを待っていたのは硝酸銀の薬浴でした。(中略)裕くんと康くんは他の病院で頑張って治療を受けている」という言葉を信じ、それを励ましとして厳しい治療を乗り越え少しずつ癒えてきた和枝さん。
その和枝さんに愛児の死を知らされたのは、事件から1年4カ月後のことでした。その時、和枝さんは変わり果てた2人の愛児の遺骨に対面し、遺骨を抱き締めたまま涙がなくなるまで泣き続けました。(中略) そして、和枝さんは事件の経緯を振り返るにつけ、国の不誠実な態度に怒りを覚え、抗議の声も強くなっていきました。国は、和枝さんからの度重なる治療についての訴えや抗議の電話をまともに受けないばかりか、和枝さんを精神病者扱いにし、家族にも適切な説明もしないまま、精神病患者だけを収容する国立武蔵療養所に転院を強要したのです。

6,和枝さんの死 
 国立武蔵療養所に転院して間もなく、1982年(昭和57年)1月24日の夜、和枝さんは窓には鉄格子がはめられた病院の一室で呼吸困難に陥り、意識不明のまま翌々日の26日午前1時45分窒息死したのです。
 無念の死でした。
 そして、それは、ジェット機墜落事件から4年4カ月目の事でした。
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私はこの話をほとんど知りませんでした。厚木基地の墜落事件は何となく聞いたことがあったくらいです。
読みながら涙が出て、辛くて吐き気がしてきました。
重症熱傷の患者さんの経過は本当に悲惨です。意識は最後まではっきりしていて、苦痛がものすごいのに、どんなに手を尽くしても救命できず、弱っていくのを見ているしかありません。本人も家族も、そして医療者さえもとてもつらいです。子どもたち、どんなに苦しい思いをしたでしょう。そして愛児の死を知ったお母さんの嘆き。私も子どもがそういう目にあって死んでしまったら、狂気の世界に入ってしまうかもしれません。

米軍パイロットだけを救助して去っていった自衛隊ヘリ。軍隊は住民を守るものではなく、国の体制を守るものだという典型的なケースです。そして、戦争をすると、自国、他国を問わず、多くの人たち、特に弱い立場の子どもたちが確実にこういう被害に遭います。イラクでもこういう被害はたくさんあるはずです。反戦世論が盛り上がらないように、報道が控えられているに違いありません。私たちが何度でもかみしめなければならない話です。


2007-06-18 13:42  nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 

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志村建世

関連して思い出したことがあります。自衛隊の潜水艦が、横須賀沖で観光漁船に衝突して沈没させ、犠牲者を出したことがあります。このときも救助活動の遅さが問題になりました。要するに潜水艦は、海から人を救うようには作られていないし、訓練もされていなかったのです。軍備というものの本質を考えさせる出来事でした。
by 志村建世 (2007-06-18 16:23) 

mai

情報ありがとうございます。ちょっと違う論点かもしれませんが、以前読んだ岩波ブックレット田中優氏「戦争って、環境問題と関係ないと思っていた」にも、兵器(戦車、戦闘機など)ではエネルギー効率や有害物質削減など全く考えられていない。「なぜなら、それは人を殺すために開発されたものだから、人々を殺さないための装置を施しても意味がないからだ」という記述がありました。田中氏によると、戦闘機は約8時間飛ぶだけで、日本人一人が生涯に排出する二酸化炭素を使い終えてしまうそうです。軍備というのは、一人ひとりの人間を大切にするという視点とは両立し難いもののようです。
by mai (2007-06-18 16:56) 

solea01

敵から攻撃された時に自分の側の兵士を治療したり、破壊された基地や軍用道路を直す能力はあらゆる軍隊が保持しますから、災害救助に使うことは可能ですね。ですが、そのための専用組織を作り訓練をした方が、ずっと効率的に人を助けられます。どの国でもそこをごまかすため軍隊を災害派遣に使っているように思えますが。
by solea01 (2007-06-18 20:52) 

mai

solea01さん、こんにちは。確かに自衛隊にとって、災害派遣は付随的な業務でしょうね。本質はやはり軍隊としての機能でしょう。特に、米軍再編によってずいぶん強化されたようですね(軍事そのものには詳しくないのですが)。またいろいろ情報ください。
by mai (2007-06-18 21:25) 

tamara

災害時に、普通の消防隊より高度な訓練をした、緊急救助隊というのは必要だと思います。自衛隊もそういう任務に徹底すればよいのにと思います。戦闘用の武器は当然いりませんね。実際には、戦争を想定しての軍備を持っている自衛隊ですが、日本上では危険すぎて使えない武器がたくさんあると聞きました。国民の知らないところで、武器の売買でお金が動いているのでしょう。私の税金もそれに使われていると思うと、許し難いです。
by tamara (2007-06-18 22:14) 

mai

tamaraさん、ありがとうございます。いわゆるレスキュー隊のようなものですね。国民を「自衛」してくれる意図ならば、そういう方面にこそ力を入れてほしいです。クラスター爆弾は絶対にいりません。防衛省の回答のように、例え国土が守れたとしても国民が長年にわたって危険にさらされるような兵器なんてナンセンスです(それこそ国体を守って国民を守らずです)。かなり以前、たしか反戦グループが「憲法違反の税は払えません」という本を出していて、防衛費分を差し引いて税金を払う運動があったことを記憶しています。軍事費と米国へ意味もなく流れるお金は私も払いたくありません。そういう運動があれば参加したいくらいです。
by mai (2007-06-18 23:18) 

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