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犬山市教委・中嶋教授の講演要旨(2)&パブコメ募集 [学校と子ども]

前記事で書いたようにこのところ忙しいのですが、かと言って他の方のブログを訪問したり、簡単なメールをしたりする時間がないというわけではない・・・つまり、子育て主婦のように「細切れ時間はあるけど、まとまった時間はなぜか取れない」という状況になっています。って、私もいちおう子育て主婦でした〜(笑)。

さて、何とか時間と体力が残っている今晩、中嶋さんの講演要旨(2)を書いてみます。
前回は習熟度別授業についてなどでした。今回はその続きで、「生活保護家庭の多い学校と正答率の相関関係について」から始めます。

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学力テストの公表結果では、生活保護を受けている家庭の占める率とテストの正答率について相関を調べています。生保を受けている家庭の多い学校は成績のバラつきが大きくなっています(著者注:「できる」子と「できない」子の差が大きいということですね)。しかし、こういう結果が出ることはテストをするまでもなくわかっていたことです。このことだけを言う必要はなく、問題は「だから、どうするか」ということです。対応策を考えるという視点は見られず、既にわかっていたことを「科学的に」レッテル貼りをしただけのように感じます。

東京の足立区では学力テストと学校選択制を導入しています。東京では、「生保」という直接的な言葉は使わず「都営住宅の多い学区」と言っています。所得の低い家庭が都営住宅に住んでいて、生保を受けている率も高いというわけです。足立区では既に、都営住宅の多い学区は避けられるようになり、生徒数が減少し、廃校や休校さえ出てきています。もともとの経済的なハンディに加えて、「自分の住んでいる地域に公立の小中学校がない」というハンディまで負わされるようになっています。これは二重の重いハンディです。このままの政策が続けば、足立区の状況が全国化することはあり得ます。

1960年代、アメリカはケネディ、ジョンソン大統領の時代ですが、彼らは対外的にはベトナム戦争を推進したりどうも感心できないことをしていますが、国内の政策にはけっこう良いものがありました。"war for poverty"「貧困との戦い」として、生活保護を受けている家庭の多い学校には援助をしました。それまで、アメリカの教育は資金も内容も全部州任せだったのですが、内容には口を出さないが連邦が資金援助をするという方針にしました。"head start"つまり、恵まれない家庭の子どもにはハンディをつけて前からスタートさせてあげるということです(著者:日本の方向は残念ながら正反対で、生まれた時の格差が広がるような政策になってきています)。有名なテレビ番組のセサミ・ストリートも、あれは日本など外国向けに作ったのではなく、家庭で英語を使う環境にない子どもたちのために、英語を修得してもらおうとして製作したものです。

今回の学力テストでも「朝食を食べてくる子どもの方が成績が良い」という結果が出ていますが、家庭で親がきちんと食事をさせられない、経済的・働き方の事情で食べさせられないという家庭だってあるわけです。60年代のアメリカでどうしたかというと、「では、学校で朝食を出しなさい」ということにして、昼食は貧しい家庭にはクーポン券を出したりしました。つまり、経済的格差があっても乗り越えられる仕組みを作るということです。今回の学力テストの結果を見ても、そういう発想は見えてきません。

それどころか、給食費を生活保護費から天引きするという案まで出てきています。生保を受けている家庭が本当に給食費が払えるかどうか、そういう検証が必要ですが、なされていません。一方、北九州市のニュースにあるように生保を受ける資格があるのに受給されないという例もあります。いまの政策は一方的で、経済的弱者に対するいじめに近いと思います。公の場でサポートできていません。

1週間ほど前に報道されたのですが、教育振興基本計画の策定が始まっています。新教育基本法の17条に記されたもので、内閣が策定するということになっていますが、実際には文科省が案を作っています。これによって教育予算が増えると思っている人もいると思いますが、基本的に別のところから削って持ってくるものです。政府の考える教育政策を決めて、例えば習熟度別学級とかですね、それをするためのお金を割り当てるものです。

文科省の案がでましたが総花的でどこに力点があるのかよくわかりません。どこにポイントを置くかはこれからの問題です。あるものは手厚く、他のものは薄くなるでしょう。国民の批判が弱ければ、国がやりたいことをそのまますることになります。学力テストの結果を教育振興計画に利用するならば、低所得層への援助などが行われるべきです。

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講演要旨(2)はここまでとします。中嶋先生が話された「教育振興基本計画」については、現在、パブリックコメントを受付中です。締め切りは12月11日です。

募集の詳細は、文科省のホームページにあります。

また、新教育基本法に反対の立場で活動している教育基本法「改正」情報センターのページには、各種資料も一緒に載っています。

私も保護者の一人として、このパブコメは何としても提出するつもりです。教育に関心のある方々、どうか一人でも多く、文科省にコメントを寄せてください。中嶋先生のおっしゃるように、「国民の批判が弱ければ、国がやりたいことをそのまますることになります」。文科省の案を読んで、疑問や批判を感じた方は、どうかお願いします。

また、新しい学習指導要領「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」に対する意見募集も行われています。こちらは12月7日までで、教育振興基本計画の締め切りより早くなっています。

なんで、こんな同時期に慌ただしく募集するのでしょう?さらに、「意見を出してもどうせムダでは?」という懸念もあると思います。しかし、上記の中嶋先生の言葉を思い出して、「国民の意見、批判」をぜひ送ってください。子どもたちが今よりも健やかに育ち、学ぶことができるように。お願いします。


2007-11-21 23:56  nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(1) 

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