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佐藤議員の発言・・・やっと新聞に載りましたね [戦争と平和]

ネットでは話題騒然だったのに、リアルでは周囲の人は誰も知らないという信じられない状態だったのですが、中山弁護士、杉浦ひとみ弁護士たちの尽力により、公開質問状を送ったことがようやく新聞に取り上げられました。ヤメ記者弁護士さんのブログNews for the People in Japan、その他いくつものブログに詳しい情報がありますし、東京新聞や何紙かの地方紙でも記事となったようなので、書き遅れた(?)私は取りあえず毎日新聞の記事を転載しておきます。

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イラク派遣:元陸自のヒゲ隊長、佐藤参院議員に質問状

 元陸上自衛隊イラク先遣隊長の佐藤正久参院議員が、派遣先のイラクで他国軍隊が攻撃を受けた場合、駆け付けて援護する「駆け付け警護」を行う考えだったことを表明したことに対し、弁護士ら約150人(呼びかけ人代表・中山武敏弁護士)が16日、「違憲」と公開質問状を送った。
 佐藤氏は10日に放映されたTBSのニュース番組で、当時イラクで指揮官として「駆け付け警護」を行うつもりだったことを明言し、「日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれてやろうと」と発言した。「駆け付け警護」は、正当防衛を超えるとして憲法解釈で認められていない。
 質問状は「違憲、違法なもので、シビリアンコントロールに反する」として、7項目について今月中の回答を求め、安倍晋三首相にも佐藤氏に辞職勧告するよう要望書を送った。佐藤氏の事務所は「現場に行って法的不備があると感じての発言。質問状は届いていないが精査する」と話した。
【長野宏美】

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安全保障の根幹に関わる問題ですから1面、でなければ少なくとも2〜3面で扱うべきテーマだと思うのですが、なぜかテレビ欄裏の社会面にそれほど大きくない記事でした(地方によって違うのかもしれませんが)。

そもそも自衛隊の派遣されるのは「非戦闘地域」だったはずですね。小泉首相の迷言「自衛隊の行くところ、そこが非戦闘地域だ」。私はしっかり覚えていますよ。それが、駆け付け警護が必要かどうか迷うような地域にいること自体、おかしくないですか。

さらに志村建世さんが8月15日の記事で考察されているように、現場の判断としてもし実現していたら、集団的自衛権発動第1号となります。それを既成事実として、「集団的自衛権は当たり前」という議論が進むことが予想されます。シビリアン・コントロールもなにもあったものではありません。

もっと言えば、佐藤氏は公務員として憲法99条の憲法遵守義務に対して、明らかに故意に違反しようとしています。

そして、この発言の背後にある怖ろしさは、おそらく佐藤氏は「こういう発言をしても大きな非難は起きないだろう」と計算して言ったであろうことです。自衛隊の元幹部であり、議員になったばかりの人が「うっかりと」失言したとは絶対に思えないのです。

佐藤氏の読みはほぼ的中し、政府からも自民党からも問題視されず、マスコミの動きも非常に鈍く、今回の質問状の件がなければ、当の発言があったTBSのニュース以外では取り上げられなかったかもしれないのです。そういう時代の雰囲気に私はとてもこわいものを感じます。

前のブログにも書きましたが、私はイラク派兵以降は、日本はほぼ戦時下の体制になっていると考えています。イラク戦争やアフガン支援に関する日本の態度について、マスコミの報道姿勢は完全に腰が引けています。本質的な政府批判、対米従属批判はほとんど書きません。事情を知っている人が行間を読めば何となく言いたいことがわかるような抑制的な記事が多いです。

戦争とは人的、経済的被害ももちろんですが、国民が情報を得る権利も著しく制限してしまうものだと実感します(太平洋戦争などは今の比ではないくらいひどかったでしょうけれども)。天木直人さんが書いておられるように、「裏のメディア」であるインターネットがもっともっと力を持つようになるか、私たち一人ひとりの市民が「本当のことを知りたい!知らせてほしい!」とマスメディアに声を挙げるかしかないように感じます。


2007-08-17 23:48  nice!(0)  コメント(7)  トラックバック(1) 

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コメント 7

solea01

終わってからなら何でも言えるな、とも思います。実際、イラク現地でそんなことをしてついでに死者でも(相手でも、「日本軍」側でも)出ていたら、バケツのそこをひっくり返したような大騒ぎになっていたはずです。
しかし、試験気球のような意味合いがある発言ですね。こういうことの積み重ねの先に、本格的な軍隊としての道があるし、そいつが確実に近づいているように思います。
by solea01 (2007-08-18 08:36) 

mai

試験気球という表現・・なるほどと思いました。いままで検討対象外とされていた事項について、失言や個人的発言のふりをしてそっと言ってみて、マスコミや世論の反応を見る。そして、それを何回か繰り返していくうちに、国民も慣らされてきて、「それもありかな」と思う。頃合いを見計らって、諮問会議とか何とかで、権威付けをして法制化に進む。これまでの自民党政権の常套手段のように見えます。とてもたいへんなことですが、そのたびごとに私たち市民が声を挙げなくてはならないようです(疲れますね〜)。
by mai (2007-08-18 23:08) 

ケロロ軍曹

 自衛隊が派遣されている地域は「非戦闘地域」ですか?
 あなたがたの意見では「戦闘地域」なのではないですか。
 カンボジアPKO以来、自衛隊は「政府の公的見解と曖昧な指示(命令)」の狭間に立たされてきました。駆けつけ警護はカンボジアPKOの時に考えた方法です。(PKO職員、ボランティア、カンボジア人を守るため)
 自衛隊派遣に関し、意見の相違があるとしても、派遣された部隊の理想と現実のギャップに悩む姿を想像できない、あなた方は世間知らずの「ぼうや」もしくは「自己中」です。
 
by ケロロ軍曹 (2007-08-18 23:10) 

mai

ケロロ軍曹さん、コメントありがとうございます。
私の理解では、イラクへの自衛隊派遣はあくまでも復興支援のためであり、非戦闘地域に限るという条件があったと記憶しています。当初のその条件が崩れた場合、もはやイラク支援の特措法はその効力が疑問視されることになると思いますが・・・?(法の前提が崩れたら、極端な場合、自衛隊引き上げも検討するべきではないでしょうか)
カンボジアPKOについては、私はまだ不勉強のため、詳しくありません。これから勉強します。
派遣された部隊の理想と現実のギャップに悩む場合、現場の指揮官がするべきは、さらに自分の上官や、防衛省、日本政府、さらに言えば日本国民に広く実情を訴えて、最善の処置をとるように要請することです。決して「勝手に現場の判断で」集団的自衛権を発動することではないはずです。今回は自衛隊、もしくは現地人ともに、日本人によって死傷者が出る事態にならなかったから良かったものの、国を守ろうという気概のある若者の命を失いかねない行動に出るのを批判することが「ぼうや」で「自己中」だとは全く思いません。
by mai (2007-08-19 16:53) 

wakuwaku_44

佐藤議員の話は、自衛隊のみならず、他の分野でも言える『現場の率直な気持ち』というものだと思います。
実際、佐藤議員は自衛隊に攻撃命令は出していないわけですし、それを出す状況がなかったわけですから。

現場で損害を受けている、苦しんでいる、攻撃されていることを目の当たりにし、そしてそれができる装備や材料があれば、仲間や友人ならば、当然何とかしてあげたい、という気持ちになるでしょう。

同じ事例では、例えば医療現場。医療保険は無制限ではなく、治療回数や投与薬も制限されています。「これ以上やったら患者の自己負担になる。でも、苦しんでいるのに投薬も治療もできない。」というのが医者や看護士にとってどれだけ辛いことか。

阪神大震災でも、目の前で被災者が一刻も早く救助を求めているにも関わらず、出動要請や出動命令がないために助けに行くのが遅れた。
実は、阪神大震災のとき、自衛隊は佐藤議員の思考プロセスで動いたんです。「訓練・調査目的」ということで、「行けるギリギリの範囲まで基地から出動した」んですね。「そこでたまたま被災者がいたから、救助した」という形にしようと。


何も自衛隊に限った話ではなく、いろんな場面で法と現場のジレンマに悩まされることが多いわけですから、それをしっかり踏まえた上で、「気持ちはわかるが我慢してくれ」ということも求めていかねばならないでしょう。あるいは「では、○○という担保や保障の上で行動を認める」というように緩和する方向性もあります。
いずれにせよ、現場の生の声を聴いた上で、徐々に改善していく方向で法は考えていくことが望まれると思います。
by wakuwaku_44 (2007-08-31 21:09) 

mai

WAKUWAKU_44さん、遅くなってごめんなさい。なにぶん、なかなか難しい問題なので、書き始めるまでに気合いがいりました。現場の率直な気持ちという解釈については部分的には同感です。私も全然違う職場ですが、一刻を争う「現場」にいましたので、杓子定規にことが運ばないことは理解しています。

しかし、現場の指揮官としてするべき行動は決して駆け付け警護ではないと思います。私の考えについてはすぐ上に書いたケロロ軍曹さんへの返信をお読みください。いまでもそう思っています。

さらに、「有識者」(私から見れば、「先に結論ありき」のかたよった人選だと思いますが)による集団的自衛権の検討が行われているいまの時期に、元現場指揮官として、また国会議員として、ああいうことを口にしたのは軽率のそしりは免れないと思います。もしも、検討会での議論や世論を有利にするために故意に発言したとすれば、さらにたちが悪いと私は感じます。

また、続報では自衛隊のマニュアルのなかで駆け付け警護について触れられていて、いざという時の既定方針であったということを読みました。もしそれが真実であれば、佐藤氏の発言は「現場での真情の吐露」とか「やむにやまれず」という感情的なものではなく(そういう部分もあったかもしれませんが)、より策略的な発言であることを疑います。

震災と集団的自衛権の行使とでは、全く重大性が違うと思います。そのあたりは、人による受け取り方かもしれませんが、集団的自衛権については、国論を2分するテーマであり今後の日本の運命がかかっていると思います。慎重の上にも慎重に議論を進めていくべきです。自民党が憲法を改正したくてたまらないのは、集団的自衛権を晴れて行使したいからだと理解しています。そういう問題をなし崩し的に既成事実化するべきではないと強く思います。

ある意味、自衛隊を海外に派兵する時点から、十分に予想できた問題であり(そのためにマニュアルもあるのでしょう?)、それを承知であいまいにしたまま、海外派兵に踏み切った政府の責任を私は重大視しています。

まあ、以上は私がもともと集団的自衛権反対論者であるという考え方のバイアスはあると思います。検討会の「有識者」を賛成、反対、中立同数にするとか、きちんとした体制にして、国民にわかるように議論をしてほしいものです。ちなみに、繰り返しになりますが私は、現行憲法下では集団的自衛権は認められない、もっと言えば海外派兵も違法であると思っています(特にイラク戦争について)。

WAKUWAKUさんとは噛み合わない議論かもしれませんが、こういう意見もあるということでお読み下さい。
by mai (2007-09-05 23:48) 

wakuwaku_44

こういう問題は、常に「綱渡り」なんです。
もちろん、maiさんの仰ることは承知していますし、それに真っ向対立する意見を持っているわけでもありません。
言い訳でも迎合でも何でもないですが、maiさんのご発言は、私にとっても「正」であり、むしろ同意すらするものです。

しかし、それと反対側の見解もまた「正」であるのです。
例えばイラクについて、国際法学者でも異論続出のイラク戦争に参戦するというのであればともかく、国連決議がある「イラク復興支援活動」を「いや、日本は憲法があるから」と否定しきれるものか、ということがあります。

もちろん、否定してもかまいません。ただ、否定したときに生じるデメリットも当然考えなければならない。それをどうするのか、という点にぶち当たるわけです。

これへの反論として「日本は日本でできる活動がある」「自衛隊じゃなくてNGO等を含めた非軍事こそ、日本の活動だ」というのがありますが、それは残念ながら反論としては成立していない。
なぜなら『非軍事の活動を誰も否定していない』からです。もっといえば『軍事か非軍事か、という「選択」をしているのではない』以上、それを唱えたところで「それはそれで、当然やっていくべきだ」という答えが返ってくるのみなのです。
従って、苦しいかも知れませんが、もっとストレートに応答しなければ、多くの支持を受けることは難しいでしょう。



これは、護憲の方々に対して反省を促す意味で述べたいと思います。

私が改憲論だからではなく、「今のままでは護憲は改憲に対抗できない」ということで、逆に、私が改憲側の中で暴走する連中を止めないといけなくなるから申し上げることだ、と捉えていただきたいと思います。


今の日本の憲法論議や国際貢献の議論において、護憲論が支持を失いつつある最大の理由は、『反論として成立していない』ことなのです。

例えば、「攻撃を受けたらどうする」という問いに対して「自衛という大義名分で侵略したではないか」と反論されます。
しかし、これは反論として成立していないのです。

なぜか。

「自衛という大義名分で侵略した」という過去の事実があるならば、「どうすれば、いかなる大義名分であっても侵略しないようにするのか」ということが論じられるべきであって、「本当に日本国内に攻撃を受け、日本国民の生命財産が脅かされたときは?」ということへの返事になってないからなのです。
本当に攻撃を受けたら、それはもちろん、それに対抗しなければならないでしょう。そうしなければ、本当に殺されたりします。

「どこが攻めてくるのか?」という逆質問があります。でも、「どこが攻めてくるのかがわかる」のであれば、逆に予防ができるのです。それがわからない、将来にわたってどこも日本を攻撃をしてこないという保証がない以上、「何があっても大丈夫」という状態をできるだけ確保しておく必要がある、となってしまいます。

「戦争が起きないようにしていかねばならない」という意見については、改憲論も完全同意なんです。それに異論がある人はほとんど皆無といってもいいでしょう。しかし、これについては「戦争が起こったときにどうするのだ?」という「リスク回避」にはなっていません。

つまり、これら私が指摘したことを、直接的にひとつひとつクリアしていかねば、「9条実現」など、現実問題として「できない」となるわけで、これでは支持を失っていくのは至極当然ともいえるでしょう。

ゆえに、私は「世界観の提示」を述べたのです。
世界観の提示とは、将来の姿を提示することですが、同時に「そこに至るプロセスを具体的に提示すること」が必要となってきます。
そうすることで「9条実現」が夢物語ではないことをひとつひとつ構築していく。それ以外にmaiさん側の運動を進める現実的な手立てがない、ということだと私は考えています。

ものすごく厳しい投稿になり、大変申し訳ございません。
ただ、そこまで深い問題をmaiさんはお考えになっている、ということでもありますので、『志』だけは捨てないでがんばってください。

また改憲側からせっつかれそうな点はアドバイスいたしますよ。(というか、改憲側の手の内をさらけ出すことは、逆に改憲から遠のくという自殺行為なんですけどね・・・。笑)
by wakuwaku_44 (2007-09-06 14:04) 

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