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天木さんの首相・外務大臣あて具申内容(1) [9条ネット・天木直人さん]

天木さんを応援すると言いながら、実は私は執筆中のブログ以外、過去の著作を読んでいませんでした。というのは、ブログで拝見する限り天木さんは現在進行形の人であり、バックボーンはしっかりしながらも、どんどん変わっていっています。そのあり方に共感を覚えていること、そして天木さんの文章からうかがえるある種の揺れを驚いたり、楽しんだりしていて、その流れを共有するだけで満足していたためです。

「9条を守れるのは自分しかいない」というような、びっくりするような思いこみの強いコメントあり、きわめて冷静中立的な分析あり、時には不安やとまどいを「こんなことまで書いていいのかなあ」という率直さで綴ったり・・・そういう生身の人間らしさに触れるたび、「これを読ませてもらうだけで十分」と思っていました。

しかし、こうやって応援すると書いてしまった以上、代表作くらいは読んでおかなくては・・・というわけで、ベストセラーになった「さらば、外務省!」を入手し、ようやく読み始めました。

まだ序盤なのですが、天木さんと言えば「イラク派兵に反対した」とばかり思っていましたが、確かに反対したのですが、思っていたよりもずっと穏やかに意見を述べています。簡単に言うと絶対反対というような過激なものではなく、「国連決議なしの対イラク攻撃を避けるべきである」という穏健な文面でした。

それを任国レバノンから外務省、外務大臣(当時は川口順子氏)、小泉首相、そして各国にある全在外公館に転送しています。ところが、当時の国際常識からみてきわめて妥当な意見に対して、関係者は誰一人として肯定的反応を示していません。全く無視し、その後、事務次官は「君も認識していると思うが、君の言動は外務省という組織の枠を踏み外したものなのだよ。そんな君がこのまま外務省にとどまっても、君自身、惨めな思いをするだけだ。外務省を去るのは、むしろ君のためにもよいことだと思う。それにしても、どうしてそういう言動を取ったのか・・・」と、脅しのような言葉で辞職を促しています。

では天木さんは実際にどのような意見を送ったのか、著書より引用してみます。2003年3月14日に送っておられます。

対イラク攻撃に対するわが国の立場(意見具申)

国連安保理における対イラク戦争攻撃容認決議の採択が不透明な中にあって、米国は単独攻撃も辞さずとの強硬な態度を一層明確にし、情勢は緊迫の極に達しつつある。そのような状況下にあって日本はどのような立場をとるべきか。  
わが国外交史上おそらく末永きに亘って記録に残るであろうこの重要政策決定に際し、本使としては熟慮を重ねた結果以下のとおり卑見を具申することとした。もとより一国の外交政策は、その時々の政策決定者がその責任と権限において決めていくものである。しかしこの歴史的外交決定に際し、日本の外交に34年間携わってきた一外務官僚として、自らの意見を表明し記録に留めることは最低限の責務であると考え、浅学非才を省みずに敢えて卑見を申進する次第である。

1.国連決議なしの対イラク攻撃は何があっても阻止すべきである。  
イラクを武装解除しサダム・フセイン体制を排除することが、もはや唯一の解決策であることについて国際社会は一致している。問題は米国が主張するように、今すぐにでも対イラク攻撃を行わなければならない必然性があるか否かである。  
本使は、国連決議が成立しないままに米国が単独攻撃に踏み切る事態だけは、なんとしても阻止すべきと考える。それは国連を死に追いやり、戦後の世界の安全保障体制を根幹から否定することになるからである。わが国最大の同盟国である米国を、世界の批判にさらされるような事態に追い詰めてはいけない。今こそわが国は国を挙げてかかる事態を防ぐ国際的努力を行うべきである。  
サダム・フセインの譲歩を待つことは幻想でしかない。対イラク攻撃は最終的には避けられないであろう。ならば、国連安保理事会が一致してそれを容認することである。大量破壊兵器の廃棄を求める国連の査察が確実に効果を見せつつある中で、フランスの言うように今しばらく査察状況を見守り、イラク攻撃に踏み切るのはその後でも遅くはない。「今しばらく」が数日以外にないとする米国の主張は如何にも硬直的であり、初めに攻撃ありきという米国の本音を窺わせるものがある。  
「米国が単独攻撃に踏み切っても、わが国がそれを支持するのは既定路線である」などとする報道が国内でさかんに流されている。本使はそれが外務省の公式な立場であるとは思わないが、よしんばそうであっても、その前に米国の単独攻撃だけはなんとしてでも食い止める気迫ある外交努力が必要ではないか。

どうでしょう?その後4年間にわたるイラクの内戦激化、イラク国民の苦しみ、アメリカ兵の多数の死傷者を見る限り、天木さんの指摘は、先見の明ありとは思えませんか。むしろ、結果論からすると、「イラク攻撃は避けられないだろう」というくだりなど、まだまだ国側寄りで、権力からみて決して過激とは言えません。この程度の意見をディスカッションすることすらできない外務省の存在意義は何でしょうか?私たち一般国民でさえ、「外務省や政府内部では賛否いろいろあって、迷った挙げ句、最終的に米国支援に踏み切っただろう」と思っていました(それが普通ではありませんか?)

こんな重要な決定を「異論許すまじ」の強硬姿勢で黙殺してしまう政府機関に私は心底失望します。

意見書には2もありますが、時間の関係で次回書きます。


2007-06-24 01:00  nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

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志村建世

私はこの本を、インドネシアに定住している友人の、強い薦めで読みました。日本の官僚の欠陥を、よく書いていると思います。同様のテーマで、かなり昔に「不正者の天国」という本を書いた人もいました。官僚の硬直と腐敗は、長期政権と一体化しています。何よりも急がれるのは政権の交代ですが……。唯一の希望は、こういう本を書いた人が、日本では投獄されずに活動していることです。
by 志村建世 (2007-06-24 21:04) 

mai

志村さん、ありがとうございます。私たち政治初心者にとっては、官僚はあまり表に出てこない分、問題点がはっきりしなかったのですが(何かありそうとは思っていました)、ここまで来ているのかと本当にビックリしてしまいました。長期政権は腐敗するというのは、たとえどの党であっても避けがたいことだと思います。政権の交代が待ち望まれますね。ホント、天木さんが投獄されず元気で活躍できていることはまだ救いですね。
by mai (2007-06-24 22:55) 

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