伝統文化こども教室に参加するかどうか? [一人ひとりを大切に]
このところ、自衛隊や天木さんの話題が多かったので、久しぶりに私の政治的興味のルーツである教育のことについて書いてみます。
文化庁が「伝統文化こども教室」という事業を開催しているそうです。いつから実施しているのか知りませんが、子ども関係で「参加しませんか?」というお誘いが今回初めてあったので、最近始まったのではないかと思います。
いただいた文書によれば、その目的は「日本の伝統的な文化継承、発展のために実施している」ということです。内容は個々によって違うようですが、我が家に届いたのは華道、茶道、陶芸、和菓子作りといったメニューです。
私はそういう日本の「伝統文化」は大事にしたいと思います。茶道は学んだことがあり、あの落ち着いた雰囲気、気持ちを集中してお手前に臨むことは大好きでした。子どもにもいつかはそうした経験をしてもらいたいと思っています。でも・・・いろいろ考えて、この教室には参加しないことに決めました。
それは、誰のために、何を目的として、そういう事業が企画されたか?を考えたからです。「一人ひとりの子どもが日本の文化に触れて視野を広げ、生涯にわたって豊かな生活を送るため」という目的だったら、おそらくいつものように参加していたと思います。しかし、教育基本法、教育3法がどういう意図で、そしてどれだけ暴力的な手法で変えられたか。そのなかで「わが国の伝統文化」がとても強調されていて、法全体のなかで占める位置づけを知ってしまったいま、私はもうその事業を子どもたちのためのものだと見ることはできなくなっています。
国民一人ひとりのための教育から、国の教えたいことを上から注ぎ込む教育へ。そういう流れのなかで、「日本の伝統的な文化継承、発展」のためのこの事業は子どもたちのためではなく、国のためのものである。私はそう考えずにはいられません。政府がこうしたいという国作り。その一つの重要な要素として伝統文化があり、それを子どもたちに小さいうちから教え込もう。そういう意図を感じます。
華道、茶道、陶芸、和菓子作り。どれも良さそうで子どもは楽しんで参加するでしょう。でも、上のように考えたとき、私は、この事業に子どもを参加させないことを決めました。趣旨に賛同していつも参加している会のなかでの企画なので、とても残念ですが・・・。将来、子どもがそういう日本文化に興味を持ったとき、自分の意思で経験してほしいと思います。
国家主義的な教育観が広まってきているなか、これからも今回のようなソフトで、ちょっと見たら良いことのような企画はたくさん出てくると思います。その時、幼児を持つ保護者としての判断基準は、子どもたち一人ひとりの幸せを第一に考えているものならば受け入れる。何か別の意図があって、ある枠組みのなかに子どもを組み込もうとするものならば参加させない。同じ内容のものであっても、その事業の動機や目的をよく考えて判断していこうと思いました。小さなお誘いのチラシ1枚から、いろいろと考えさせられました。
はじめまして。
目的が問題と思われたようですが、なにがそう思われたのでしょう?
教育は大事なので、気になりました。
by あゆ (2007-07-01 20:28)
あゆさん、こんにちは。コメントありがとうございます。本当に教育は大事ですね。「教育は国家百年の計」と言われるように、次の世代の国民の幸せ、国のあり方と変える重要なものなので、私もメインテーマを教育に置いています。
さて、安倍内閣の教育観のなかで、「伝統と文化」がどういう位置づけをされているか、教育基本法の条文を載せてみますね。かなり長くなりますが、読んでみてください。
(昨年、変更前の教育基本法)
第一条(教育の目的)教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。
(変更後の教育基本法)
第二条(教育の目的)教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
1. 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
2. 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
3. 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
4. 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
5. 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
変更された教育基本法の(教育の目的)の条文に私は賛同できません。そもそも基本法という性格上、国民が国に対して権力の暴走を抑え、「国がしなくてはならないこと」と「国がしてはならないこと」を定めた法律であるべきです。それが変更後には、国民が身につけるべき徳目を並べたものという性質が強くなっています。
「伝統と文化」という言葉のある第5項は愛国心の是非を巡って議論になった箇所です。愛国心を盛り込みたかった自民党に対して、それに抵抗のあった公明党との間で妥協の産物としてまとまった条文です。その意味するところは、「日本を愛しなさい」という愛国心を教育目的にするということです。あゆさんは、この点についてどうお考えでしょうか?私は、国が自らを愛しろと命じるとき、それは私たちが漠然と思い浮かべるような日本の風景や文化ではなく、現政府、つまり国の体制のことで、「権力に逆らうな」というメッセージがこめられていると考えています。
そういう意味で私はこの第5項には反対で、国を愛する態度と結びつけられた伝統・文化、そしてそれを子どもたちに教え込もうという個々の政策にも非常に抵抗を感じます。
学校教育法(教育基本法の具体化)のことなど、他にも論点はありますが、長くなりますので、これくらいにしておきます。意見がありましたら、遠慮なくコメントくださいね。
by mai (2007-07-02 10:42)
う~ん重い問題ですね。
一つ一つはいいことが多いしなるほどと思います。
個人・法人の自主性と国家のコントロールの程度の問題があるかと思います。これは道徳とかにかぎらず貧困・雇用・環境・労働・保険とかさまざまな分野でもあるようです。
国の概念が明記していないので、国をどう捕らえるかで解釈かわり、運用がかわります。
とてもいいほうに使われると、世の中モラルも向上してよくなりそうです。
でもとても悪く使うと、政権や個人犠牲で国家組織維持になりそうです。
「自然大切に・・」は環境には行政の責任関与が必要ではと思われます。
小さい政府進めているはずですけど・・。
それと2の個人の価値の尊重とありますが、現状画一化方向なので、これをいれる価値はあるともいえなくはなさそうかもしれません。
男女平等がありますがこれも・・。政権支持者にはジェンダーフリー・男女共同参画活動に好意的でない方がおおいので・・。
「伝統・・」ですが格差社会をさらに進める・つまり自由競争で効率化をはかる政策ですから、効率のわるい伝統技術・文化とかはさらに衰退します。
例えば木製ボート技術はきえかかっています。効率化にあわないんです。売れないんです。伝統技術の後継者を育てる事ができません。
つまり片方で壊れる社会方向の政策進めて、もう片方で、それを教育で維持しようとしているのでは?
なんかそう感じました。
by あゆ (2007-07-02 11:47)
一つひとつの項目だけ見ると、なるほど〜と思ってしまうようにできていますね。でも、この法律をタウンミーティングでのやらせ・民意の偽造、国会での不十分な審議、公聴会で与党側の公述人・参考人まで疑問を呈したこと(兵庫の公聴会では与野党4人の公述人とも、少なくとも前国会での成立には反対でした)、そして単独・強行採決の連続という超強権的な手法に訴えてまで、そこまでして通したかった政府の意図がどこにあるかを考えてみる必要があると思います。
私は基本的には人間性善説を取りたいですし、政府のすることも良いことは良いと評価したいと思います。でも、この法律のできかた、そして裏に透けて見える思想を考えると、どうしても賛同できません。
あゆさんが可能性を挙げられているように、良いほうに使おうとするならば、上に書いたような強引なやり方を取るでしょうか。
そして私は「態度を養う」の連続に違和感を覚えます。こころのなかはどうであれ、とりあえず規範に従う人間を育ててしまうことを危惧するからです。子どもには自由な学びと思考が保障されたなかで、自分なりの世界観を構築していってほしいと思います。
>「自然大切に・・」は環境には行政の責任関与が必要ではと思われます。小さい政府進めているはずですけど・・。
「伝統・・」ですが格差社会をさらに進める・つまり自由競争で効率化をはかる政策ですから、効率のわるい伝統技術・文化とかはさらに衰退します。
>例えば木製ボート技術はきえかかっています。効率化にあわないんです。売れないんです。伝統技術の後継者を育てる事ができません。
賛成です。いまの日本は世界のなかでみると、もう十分に小さな政府であるという説を読みました。さらに、教育、医療・福祉、そしてあゆさんのおっしゃる自然保護や伝統技術・文化の継承などに関しては、小さな政府であってはいけない、つまり予算を削ったり過度に競争原理を導入してはいけない分野です。
いまの政府は逆で、控え目でよい大企業への保護や経済政策については大きな政府で、上に挙げた分野には小さな政府すぎる方向だと思います。
ご存知だと思いますが、新自由主義政策、格差拡大で広がる一般市民(いわゆる負け組)の不満が爆発するのを抑えるために、規範や愛国心を必要以上に強調している面があります。
by mai (2007-07-04 15:48)
そこが非常に大きな疑問です。
なぜそんなにいそぐのでしょう?
後余命1年の不屈の強い意志で何とか日本の危機を救いたいという政治家ならわかりますけど・・。
小さい政府ですが、組織・人員とかでは郵便・通信そして今度社会保険庁手放すと、小さい政府といえますね。
財政的には別です。
人口・GDP・国家予算総額・内訳とか知らないので・・。
教師・医師・弁護士は高い倫理が求められ営利に走ってはいけない分野だそうです。ローマ法の時代からそういうのがあるそうです。
競争がいけないとはおもいませんが、なにごともほどほどにですよね。
どれだけ人を助けたかという競争も少しあってもよさそうですwww
by あゆ (2007-07-05 09:57)
>後余命1年の不屈の強い意志で何とか日本の危機を救いたいという政治家ならわかりますけど・・。
実は私もそれ、考えたことがあるんですよ☆首相は本当はすごーくいい人で、持病があるようなので、命が長くないと覚悟して自分の思うところの改革を強引に進めようとしているのかも・・・って。でも、いろいろな行状を見聞きするうちに、その説はすぐ却下しましたが(笑)。病気も難病ですが命にかかわるものではないようです。
では、なぜ急ぐかというと・・・
・首相になったからには「私の内閣」でできることは何でもドンドンしなければ気がすまない性格
・アメリカから年次改革要望書などできつーいノルマが課されている
・長期政権になりそうにないと謙虚に?思っていて、いまのうちにやってしまおう、幸い衆議院はまれに見る絶対多数だし
まあ突き詰めれば、私が安倍氏の目指す戦前レジームが大嫌いなように、彼は戦後レジームがイヤでイヤでたまらないのではないでしょうか。
ちょっと古いデータですが、対GDPでみると、学校教育費の公的支出はOECD加盟国平均5.0%に対して、日本は3.5%とトルコの3.4%に次いで第24位=ピリから2番目です。http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3950.html
医療費はもうちょっと順位が上がりますが、それでも対GDP比17位、1人あたり18位と決して高くありません。
これを見ると、教育、医療面では、小さすぎる政府だと思います。とくに、未来への宝である子どもたちへの投資を惜しんでいる点を私は許せません。
国家予算はだいたい80兆円、国の債務はその10倍の880兆円でそのうち100〜300兆円が米国債の買い支えに使われていると言われています。債務が年間予算の10倍だなんて、住宅ローンだったら絶対通りませんよね。
競争は人間をスポイルしないかたちのものならば、あってもよいかもしれません。でも、書いておられるようにほどほどですね☆
by mai (2007-07-06 23:55)
教育・農業お粗末な国には未来はありません!
長期的視点での利益です。100年先の投資です。(30年かも?www)
農地改革で購買層産み、経済の安定できたのも教育があればこそ。
アメリカはフィリピンで農地改革してますが、教育水準が低すぎて失敗しています。購買層(内需)が弱く社会不安招いているそうです。
あるアフリカの大臣は、外国の有名人?がスリにあったとき、教育担当大臣が、「すべて私の至らなさです。申し訳ありません」と謝罪したそうです。
by あゆ (2007-07-07 18:55)
アメリカ国債を政府がもっているんですか?
by あゆ (2007-07-09 15:29)
>アメリカ国債を政府がもっているんですか?
持っています。正確には政府単独ではなく、政府系金融機関や財界も入れてだと思いますが政府としても多額に持っています。いままで私が調べた限りでは、その内訳は機密扱いになっていて、誰か議員が情報公開をしっかりと要求でもしない限りわからないそうです。過去の記事でそのことをテーマにしたものがありますので挙げておきます。http://blog.so-net.ne.jp/kyoikushiminnokai_in_shiga/2007-01-12
次のブログに日本が負債大国になった原因が詳しく分析してあります。マイケル・ハドソンという方は有名な経済学者のようです。http://sun.ap.teacup.com/souun/126.html
農業について、あゆさんに同感です。食料自給率を上げる努力をしないと、いざ輸入がストップした時にどうしようもないですからね。いまの政策は反対のようで、そのへんは(農家の票を意識してでしょうけれど)民主党の方が良いように思います。
by mai (2007-07-09 15:58)
あゆです。
政府は莫大な借金。でも最大の債権国。アメリカでは中国・日本が多くのアメリカ国債もっているのが問題視する声が上がっています。
農業は自給率もいいですけど、農地・山林とかの保全をしないと衰えていくそうです。
by ayu15 (2007-07-09 19:06)