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「きのくに子どもの村学園」へ行ってきました(その1) [きのくには楽しい]

国民投票法など、ホントにえらいことになっていて(相変わらずマスコミはちゃんと報道しないし・・意図的無視にももうだいぶ慣れてきましたが)、もう気が気ではないのですが、毎日怒ったり鬱になってばかりでは私の精神状態ももたないです。

というわけで、今日は久々に楽しい話題を書きたいと思います。和歌山県の「きのくに子どもの村学園」に見学に行ってきました。本当に楽しかった!普段の暮らしとは別世界のような山の上の学校で、世の中の理不尽な動きも忘れて、ゆったりとした時間を過ごしてきました。

この2カ月くらい、私の頭のなかの2〜3割は「きのくに子どもの村」のことが占めていて、数少ない癒しになっているのですが、振り返ってみると、なぜかブログに書くのは初めてです。簡単に紹介からしてみます。

「きのくに子どもの村学園」とは、大阪市大の教育学教授だった堀真一郎さんという人が15年前に開いた私立学校です。最初は小学校だけだったのですが、その後、中学校、高等専修学校と増えています。文科省認可の学校法人です。堀さんは世界各国の自由教育を研究されていて、いろいろな利点を取り入れておられますが、最も参考にされたのはイギリスにあるサマーヒルとスコットランドのキルクハニティという学校です。思想的にはニイルとデューイという教育学者(兼実践家)の影響を受けていますが、それだけでなく、とてもたくさんの独自のアイデアを出して工夫をされています。

見学の時にいただいた「きのくに子どもの村通信」に書いてある理念を紹介します。これを読んで、新教育基本法や一連の「教育改革」の管理強化方向を嘆いている私は、本当に泣けてくるほど嬉しかったです。
理念:自己決定、個性、体験を尊重する生活と学習により、一人ひとりが感情的にも知的にも社会的にも自由な人間へ成長するのを援助する

実際のカリキュラムとしてはプロジェクトと呼ばれる体験学習(別荘建てたり露天風呂作ったり、すごく本格的です)が核になっています。年度によって違ってくるようですが、今年度の小学校では「工務店」「きのくにファーム」「NUNO工房」「クラフトショップ」「おもしろ料理店」の5つがあります。どこに入るかは4月に子ども自身が決めて、定員とかはなくて1年生から6年生までの縦割り編成です。

教科は「かず」と「ことば」があり、プロジェクトとできるだけ結びつけて学ぶようになっています。あとはフリーチョイスという芸術系の選択授業があります。1学年15人で、全寮制ではないけど4分の3くらいの子は寮に入っています。もう一つ、とても重視されているのが全校集会で、大事なこと(校則など)も子どもたちと大人が対等に話し合って決めています。

見学時の様子や感想を書いてみます(あまりまとまりなく走り書きですが)。
・年度末に近く時期的に中途半端なので見学の人は少ないかな?と思っていましたが、私たち一家のほかに5組来ておられ、さらにNHK教育放送のインタビューの人までおられたのにはビックリしました。
・堀さん(子どもたちからも、「堀さん」と呼ばれています。どの「先生」も先生とは呼ばれず、名前やニックネームです)が、「静かな」(表現が適切かどうかわかりませんが)方なのにちょっと驚きました。これだけのユニークな学校を作り上げ、著書でもはっきりと主張されているので、良い意味でもっと強烈な人を想像していました。ところが、実際にお目にかかってみると、穏やかな口調で静かにお話しされます。
 自由を何よりも重視するだけあって、ご自分から見学者にPRなどすることなく、「質問してください。何でもお答えします」という姿勢でいらっしゃいました。
・プロジェクトの様子を見せてもらいました。というか、校内どこでも自由に出入りOKで、制作中の焼き物の部屋など入れない場所には子どもの字で入れない理由が書いてあります。子どもたちはみんな忙しそうに働いていて、一見それぞれバラバラなことをしているように見えるのですが、よく観察するとうまく役割分担されていて、誰も統率などしていないのに(「統率」など、きのくにとは一番縁遠い言葉だと思います)自分のしたいことと仲間との協力がちゃんと両立しているようでした。
・それほど広くない校舎や校庭でみんなが作業しているので、たくさんの子どもたちが行き来しているのですが、怒声、喧嘩、トゲトゲしい雰囲気は全くなく、学校全体が大らかな雰囲気でした。
・昼休みに男の子たちはサッカーをしていました。明らかに体格の違う、つまり学年の違う子どもたちが20人くらい遊んでいました。普通の学校では学年が違うとなかなか一緒に遊ぶ機会もないと聞いていましたので、縦割り編成や寮生活で学年を越えて(というか意識せず)付き合うことに慣れているのでしょうね。
・「きのくに子どもの村通信」に「よい学校では、子どもが自発的に動いている。教師は目立たない。よく見ないと姿が見えない。声もほとんど聞こえない。きのくにでは、見学者や取材の人からよく「先生はどこ?」とか「見分けがつかない」とかいわれる。たしかに「オレは教師だ。ついて来い」と叫ぶタイプの教師はいない」と書いています・・・これは本当です!姿が目立つのは子どもばかり。よく見ると先生らしい人もいるのですが、子どもと違和感なくまざっていて見分けがつきません。
・昼食は子どもたちが以前に作った別棟の小さな「喫茶店」で、これも子どもたちが作ったカレーをいただきました。おいしかった!好き嫌いの多いうちの子もペロリと食べていました。接客は4人の子どもが担当してくれて、みんなとても丁寧な応対でした。カレー作りも接客も当番制とのこと。
・中学生のチームがカートの運転実験をしていました。あとで通信を読むと「道具製作所」というプロジェクトで、バイオディーゼル燃料というのを使っているそうです。廃食油から合成した燃料で一般の燃料よりも黒煙が少なく環境にやさしいそうです。ちなみに中学校でのプロジェクトはそのほかに、「動植物研究所」(魚の泳いでいる水槽がいくつもありました。ビオトープも作っているそうです)「くらしの歴史館」「花と野菜の実研室」「わらじ組」というのがあります。
・うちの子は運動場横の長〜いすべり台がとても気に入ったようで、10回くらいすべっていました。これももちろん「工務店」の子どもたちの手作りで、作った時の様子が「自由学校の設計」という本に詳しく書いています。すべり台の勾配はどのくらいにしたらいいか?手すりの高さは?とディスカッションして一つずつ決めていったことを読んでいたので、「これがあの時できたすべり台なのだね」と感慨を覚えてしまいました。

あと、質疑応答の一部と、私よりもニュートラルな目で見ている夫からの感想を書きたいのですが、今回はいったんここまでとします。


2007-03-09 14:19  nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(1) 

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コメント 6

タマラ

まいさん、「きのくに子どもの村学園」の実践、詳しく記事にしてくださってありがとうございます。素晴らしいですね!
学園の理念「自己決定、個性、体験を尊重する生活と学習により、一人ひとりが感情的にも知的にも社会的にも自由な人間へ成長するのを援助する」はまさに、教育のもっとも大切な目標ですね。 大多数の公立の学校に通う子ども達にもこういう理念で教育をしてほしいと、切に思います。
「感情的にも知的にも社会的にも自由な人間」、この言葉の意味は政府の人達には理解できないでしょうね。
楽しく元気が出る経験をされてよかったですね。
by タマラ (2007-03-09 16:01) 

mai

タマラさん、ありがとうございます☆
本当にこの学校の理念は、公立、私立を問わず、どの学校でも通用するものだし、取り入れてほしいと思います。昨今の教育改革とは反対の方向ですが、いつかこちらに向かうように願っていますし、保護者として行動していきたいです。
教育基本法問題以来、やっぱりふさぎ込みがちだったのですが、久しぶりに「肩の力を抜くことができる場所に行けた!」という感じです。
ちょっとコンサバの夫がそれなりに評価してくれたのも嬉しかったです(そのあたりのこともまたブログに書きます)
by mai (2007-03-09 23:03) 

hm

 いいなー自由だなー豊かだなー。
 
 みんな一人一人が幸せを感じられるものは,結局最終的には「強い」んだと思いますね。
 こういった理想的な,緩やかさと暖かさのある学校を作ってゆくのは,しかし,大人の緻密な知の力の結集ではないか,と思います。それに加えて,子どもへの限りない愛情・熱意ですよね。
 
 いくら「教育改革」が逆の方向に進もうとも,個人の尊厳を重視しない方策や,現場の自由や創意工夫を奪い表面的な成果を即時求めるやり方など結局は上手くいかないと思います。善悪の問題でなく,方法論として破綻していると思っています。
 
 だから,結局は,一番大切な本質(一人一人の幸せという原点を忘れないもの)が廃れることなどはありえず,未来は希望に満ちていると私は思います。希望に満ちた未来を鮮明にイメージできる人が一人でも多くいる限り。
 
by hm (2007-03-12 16:49) 

mai

hmさん、ありがとうございます。やや悲観的になりやすい私に対して、いつも前向きなコメントで励ましてくださって、本当に感謝しています。
ご指摘通り、この学校では「黒子」としての大人の力が大きいと思います。「通信」にも「この学校の教師の仕事はラクではない。教科書も教師用指導書もない。つねにアイデアが求められる。日頃から感度のいいアンテナを張る、本を読む、下見に行く、活動や子どもの様子を点検する、保護者にも理解してもらう、健康に気を配る等々」とあります。

また他の箇所には「・・・しかしこういう管理強化策は、学校からますます笑いを失わせるだけだ。学校を活性化するには、教師に、何をどのように教えるかの自由、そして時間とお金のゆとりを認めるのが一番なのだ」と書いておられます。「ゆとり」が必要なのは生徒以前に先生の方でしょうね。

>未来は希望に満ちていると私は思います。希望に満ちた未来を鮮明にイメージできる人が一人でも多くいる限り。
そうですね!私たち一人ひとりが希望を胸にして、それを一人でも多くの子どもたちにつないでいくことが大切ですね。
by mai (2007-03-13 11:05) 

おおくにあきこ

.国民投票法案の公聴会開催の強行採決など、マイナスの感情ばかりにとらわれていましたが、まいさんのブログに伺って、なんだかうれしくなりました。みなさんがおっしゃっているように、子どもたちと境界線のない立場にいる先生たちのエネルギーの出力は、計り知れないものがあると思います。でも根本には自由がある。素晴らしいですね。きっとそのように子どもたちと接することを夢見ている先生たちも多いことでしょうね。もとあった教育基本法の理念を改めて思い出しました。親のあり方も考えさせられました!
by おおくにあきこ (2007-03-16 23:36) 

mai

おおくにさん、コメントありがとうございます。
私もネットでニュースをチェックするたびに、マイナス感情の嵐です(風力7くらい(笑))。でも、「そもそも、この内閣は私がいままで身につけた人権や民主主義の感覚とは正反対の性格を持っているのだから、何が起こっても不思議ではないし、驚かないぞー」とある種の居直りも、ほんの少し出てきました。

あきらめではなく、できることはする決意ですが、ある方がブログに書いておられたのですが(ご存知かも)「ハードな市民運動とスローな日常生活との両立」が大事だなあと思います。まだ実現できておらず、自分に言い聞かせている段階ですが・・。

教育基本法は私の心のなかでは、いまも47年法が生きています。子育てもその精神でやっていくつもりです!公立校での自由教育の実践について、きのくにでの質疑応答でほんの少しだけですが話題になりました。また時間みつけてブログに書きます(と思いながら、日がたつのが早いこのごろですが^^;)
by mai (2007-03-17 12:12) 

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