SSブログ

米国国債について [教育基本法]

今日の話題は世の中の動きを注意深く見てきた方は、すでにご存知のことだと思いますが、のんびりと自分の専門や趣味の世界に生きてきた私たち夫婦にとっては未知のことで、教育基本法問題からいろいろと勉強するうちに、初めて知って愕然としています。それは、「お金がない、お金がない」と福祉や教育費を削減しようとしている日本が、米国債を超大量に買っている(政府?、政府+企業?)という事実です。
年明けに読んだ本で続けざまにその話に触れていましたので、ご紹介しておきます。
一冊目は文藝春秋1月号の藤原正彦さんの「国家の堕落」という文章です。
あの「国家の品格」の著者であり、個人的には留学記やその他のエッセイなど以前から読んでいて、共感する面は多い方です。

「国家の堕落」そのものは教育論で、非常におおまかに言うと、教育に市場原理主義を持ち込んではいけない、さらに経済界がその利益を長期にわたって守る目的で子供たちの教育内容に口を出すべきではないという趣旨のもので、私も基本的には賛同できる内容です(残念ながら教育基本法については触れておられませんが)。手に入る方はぜひお読みください。

その96ページ下段に次のように書いておられます(こういう引用のしかたが著作権などで問題があるようでしたら変更しますので、どなたかご指摘ください)。

「・・・これらはすべて市場原理イコール自由競争イコール規制撤廃イコール官から民へ、の教義の下で実行された。
 その結果は、雇用が破壊されたばかりか、金融機関がバタバタとつぶれ、失業者は増加し、国の借金は小泉政権の下だけで250兆円も増加した。借金の飛躍的増大ということは税収不足ということであり、これだけの荒療治にもかかわらず経済がまったく回復しなかったという証拠である。
 そもそも市場原理の家元たるアメリカでさえ、長年、双子の赤字、すなわち貿易赤字と財政赤字に悩んでいる。世界一の債務国でもある。どうにか破綻せずにもっているのは、日本と中国による大量の米国国債購入のためである。2003年から1年間で、日本は25兆円も買っている。市場原理は経済に限っても良いシステムでないということである。
 その上、市場原理は必然的に格差を大きくする。これを取り入れた国ではどこも格差が広がった。南米では貧富差の拡大や経済危機が頻発し左派政権が相次いで誕生することとなった。サッチャー時代のイギリスや韓国でも貧富の両極化が進んだ。OECDの統計によると、アメリカはメキシコについで世界第二の格差の大きな国である。日本でも格差が広がった」

格差については、先日聴いた講演によれば2000年の時点でのOECDの統計(2006年発表)で、主要国の貧困率を比べると日本は第二位(13.5%)まで上がっていて、第一位のアメリカ(13.7%)とごくわずかな差であったそうです。

続いて読んだ「憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本」でも、米国債についての記述がありました(52ページ)。これはQ&A形式で「でもアメリカは大きな赤字を抱えているのでは」という質問に対する答えの部分です。

「 そのとおりです。戦争による財政支出によって長期間経済を拡大することは、通常は不可能です。それは財政赤字が拡大し、経常収支も赤字になって、国債が暴落したり、為替が暴落して経済が立ちゆかなくなるからです。実際、アメリカの2005年度の財政赤字は3186億ドル(約36兆円)、経常収支の赤字は8049億ドル(約90兆円)と天文学的な数字になっています。・・・・・
(略)
 ・・・・・アメリカはドルや米国債の価値を守る必要があります。そのためにアメリカがとった手段は、米国債を買わせることでした。日本政府はおよそ80兆円もの米国債を持っているといわれます。特に2003年度は年間33兆円もの米国債を取得しました。42兆円しか一般会計の税収のない国が33兆円もの米国債を買ったのです。それだけでも異常な事態なのですが、日本はこの米国債を売ることができません。1997年に橋本龍太郎総理(当時)は、コロンビア大学の講演で「私は過去に日本政府保有の米国債を大量に売りたいという誘惑にかられたことがある」という発言をしました。直後に、ニューヨークダウが暴落したため、米国での橋本元総理への批判が高まり、橋本総理以降の首相は、誰も米国債を売ると言い出すことができなくなってしまったのです」

この本はタイトル通り、改憲問題について護憲の立場から論じたもので、あんころの呼びかけ人の高橋哲哉さんほか、学者、ジャーナリスト、経済学者など数人の方がそれぞれの専門知識を生かして執筆されています。
とてもわかりやすく、改憲、護憲いずれの意見を持つにしても、知っておくべき基礎知識が得られます。お勧めです。

この2冊を読んで、その額の大きさに驚きました。日本の予算が80兆円程度なのに、その半分近くの額を米国債取得に当てている計算になります。もちろん、民間資金も多いでしょうから、全額政府負担ではないと思いますが、こんな金額をアメリカに入れていいのでしょうか?日本では医療や福祉の費用、さらに公教育費まで削ろうとしています。教育基本法改正の背景には「(いわゆる)できない子には必要最低限の教育でいい」という考え方が見え隠れしています。

極端な円高を抑えて輸出産業を保護するという理由があるのでしょうけれど、一般国民の基本的な生活が破綻しかけていて、地方自治体も軒並み赤字に苦しんでいる時に、これだけ多額の米国債を買う意味があるのでしょうか?国民の生活を守るべき政府がこれでいいのでしょうか?


2007-01-12 15:51  nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

ayu15

有利な時期に少し売りたい気が・・。
by ayu15 (2007-07-16 22:37) 

mai

私だったら貧乏ですし、とっくに売っていると思います(笑)。
でも、政治的な問題ですから、売れないのでしょうね〜。
「ある時払いの催促なし」でしょうか。本当に払ってくれるのでしょうか?
by mai (2007-07-17 05:34) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。