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英国の演劇を勉強していて・・・ [自分の勉強を楽しむ]

この数日間、イギリスの演劇の勉強に夢中になっていました。私は伝統的英語教育の世代で、読む力に比べて(それもたいしたことはありませんが)、ヒアリング力が極端に低いです。例えば、ネイティブの人に現実の場面で"Hold it tight."と早口で言われると、もう聞き取れないくらいのものです。字にするととても簡単なのですが、なぜかわからないですねー。もっとヒアリングができれば、英語圏から生の情報を得ることができるのにと残念に思うこともあります。

それでも、英語コンプレックスが強いというわけでもなく、評論家の内田樹さんや藤原正彦さんのおっしゃるように、語学よりも思考の深さの方がたいせつ。特に子どもはまず母語をきちんと身につけるべきで、英語早期教育は必要ないという考え方の方に共感を覚えます。「心から勉強したくなったり、まわり全部が外国語という環境に身を置くことになったり・・・それからで遅くないのでは」と思ったりしています。

そういうふうに、他国語についてはちょっと距離を置いた考え方を持っている私ですが、大学の科目に「BBCドラマで学ぶ」というのがあり、日本語の演劇は好きで時々観にいく上に、内容もとてもおもしろそうなので取ってみました。


イギリスの現代女性劇作家として有名な(初めて知りましたが)Caryl Churchill(キャリル・チャーチル:1938年生)のTop Girlsという演劇で、1982年にイギリスのロイヤル・コートで初演されたそうです。内容はフェミニズム寄りのもので、ここで説明するには複雑すぎるのですが、人材派遣会社のManaging director(専務)に昇進したMarleneというキャリア・ウーマンを中心に、古今東西の女性の光と陰を描くという感じです。

古今東西と書いたのは、第1幕は歴史上、伝説上の女性たちが集まってMarleneの昇進祝いのパーティーが開かれるという設定だからです(おもしろそうでしょう?)。参加するのは、イザベラ・バード(ヴィクトリア朝の女性探検家)、ダル・グレット(大ブリューゲルの油彩画「悪女フリート」に描かれている伝説の女傑)、教皇ヨハンナ(女人禁制の法王庁で、ローマ法王(教皇)となった女性。実在は不明)、グリゼルダ(ボッカチオのデカメロンやチョーサーのカンタベリー物語に登場する忍耐強きグリゼルダ。貞淑な妻の鏡として中世・ルネサンス時代に人口に膾炙した)。そして日本からは後深草院二条(「とはずがたり」の著者として知られる鎌倉時代の女性)が登場します。

Marleneも含めてその6人が自分の人生でのできごとを中心にガンガン喋りまくります。もちろん、演劇を観ただけでは理解できないので、英語の脚本と日本語訳が載っているテキストとにらめっこしながら聞き取ろうと頑張ります。さすが現代を代表する作家の手になるものだけあって、会話は生き生きとしていて内容も多彩で、語り手の時代にタイムトリップしたような感じにさえなります。

私がこの劇に惹かれるのは、根底に流れる作者キャリル・チャーチルの考え方に賛同するということも大きいようです。劇のメイン・テーマになっているフェミニズム、特に第2幕の現実世界の場面で、「女性の上司を持つのは男性にとって耐え難い」というような問題は、今では少し当てはまらないかもしれませんが、社会を見る作者の視点には共感するものがたくさんあります。

テキストに載っていた作者へのインタビューです。
I know quite well what kind of society I would like: decentralized, nonauthoritarian,communist,nonsexist-a society in which people can be in touch with their feelings,and in control of their lives. But it always sounds both ridiculous and unattainable when you put into word.

"a society in which people can be in touch with their feelings,and in control of their lives"
これってとても素敵な社会ではないでしょうか☆

ところが、この後の詳細は次の記事にしたいと思いますが、79年にはサッチャーが首相に就任し、新自由主義、競争主義的政策を断行します。作者はサッチャーにはかなり批判的で、そういう内容の演劇をいくつも発表することになるそうです。・・・このあたり、いまの日本と似ているところも多いようです。改めて記事にします。


2008-06-05 11:02  nice!(1)  コメント(14)  トラックバック(0) 

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コメント 14

shira

 外国語の聞き取りはムズカシイですよ。私も英語教員のハシクレですが、ネイティブが普通の速度で話すとかなりつらいです。
 でも、maiさんの姿勢は好きですね。ヘンに力まない方がいいですよ。
by shira (2008-06-05 21:01) 

mai

>shiraさん
プロの先生にコメントいただいて、とても嬉しいです(ちょっと恥ずかしい?)。女性ばっかりの劇のせいもあるのか、まあ早口で喋ること、喋ること。台本がなかったら全くお手上げです。授業の後半であった演出家へのインタビューがゆっくりに聞こえました(笑)。英語、というか英語で書かれた文学や戯曲(戯曲は今回初めてですが)は好きなので、暇を見つけて楽しんでみます。
by mai (2008-06-05 23:46) 

Ladybird

 意味がとれないので勝手になおしてみました.
(原文)I know quite well what kind of society would like
(改正)I know quite well what kind of society I would like
あげ足とり,すみません.

 英国の演劇で使われる英語はきれいですね.米語は r 音が耳について,好きになれません.
by Ladybird (2008-06-08 10:36) 

mai

>Ladybirdさん
確かに・・・そうですね!さっそく原文に当たってみましたら、やはり私のタイプミスでした。記事中の文も直しておきます。そこまで読んでいただき感激です(初歩的なミスですが)。私もイギリス英語の方が好きです。ただ、もっと聞き取りやすいと思っていたのですが、大勢の言葉が重なったりすると全然わかりません〜(^^;)
by mai (2008-06-08 12:52) 

Ladybird

 英語のリスニングに良いページを見つけました.BBCのリースレクチャー2008です: http://www.bbc.co.uk/radio4/reith2008/
 今年はChinese Vistas というタイトルの連続講義で,このlecture2が,まだ数日は聴けると思います.
 私のパソコンはmp3のダウンロードはできませんが,Program details をクリックして聴くことができます.またTranscript をクリックしてテキストを印刷できます.
 講義はまだ何回か続くので,とりあえず lecture2 をお聴きになって,興味があれば次回以降も同じようにすれば良いのでは.
 以上まことに差し出がましく,ご不快に思われなければ幸いなのですが,是非お試しください.
by Ladybird (2008-06-13 15:38) 

mai

>Ladybirdさん
本当にありがとうございます!ページに行ってみると、私のPCではlecture1、2ともに聴けました。早速ブックマークしました。そのまま聞き取る力は(当然)ないので、transcriptを印刷して記事中のTop Girlsと同様に勉強したいです。仕事がオフの日に早速、作業を始めます。

>以上まことに差し出がましく,ご不快に思われなければ幸いなのですが,是非お試しください.
いえいえ、全然!そんなことありません。あまりにもpoorなリスニング能力に悩む?私としては、とってもありがたいです。こちらからお願いしてでもいただきたい情報です。

ちゃんと聴いたら、感想などご報告します!



by mai (2008-06-15 23:27) 

Ladybird

 たびたびすみません.
 BBCのホームページですが,ご紹介した「音」の掲載は「期間限定」です.ブックマークではなく,録音するのが正解です.
 パブリックスクールの英語(オクスフォードとかケンブリッジの英語)はカタカナでしゃべっているように聞こえるので,私は「カタカナ英語」と呼んでいます.今年のリースレクチャーの講演は,パブリックスクール風のクセもなくて,「カタカナ英語」よりさらに聞き取り易い講演になっています.
 なおBBCには,ほかにもお勧めしたいページがありますが,それはまたの機会に.
 それと,ニュース報道ではBBCよりもITNのほうが,聞き取り易いようです.残念なことに,いま私のパソコンではITNのニュースが聴けません.
by Ladybird (2008-06-16 09:55) 

Ladybird

 またの機会に,と書きましたが,ついでにご紹介しておきます(私は忘れやすいので).
http://www.bbc.co.uk/worldservice/learningenglish/work/handy/
です.
 気が向いたら一度聴いてみてください.
 
by Ladybird (2008-06-19 02:22) 

mai

>Ladybirdさん
季節の変わり目ゆえか、持病の喘息が出てしまい、伏せっておりました。お返事が遅くなって、失礼しました。
BBCの方の過去のラインナップを見てちょっとびっくりしました。私はイギリスの文化に詳しい方ではないのですが、バートランド・ラッセル、アーノルド・トインビー氏など、超有名な方々が出演しておられたのですね。

音の掲載は期間限定ということでは、ぐずぐずしてはいられませんね。ブログ書きはお休みして、聴いてみたくなりました。

ニュースのご紹介もありがとうございます。たいへん苦手なビジネス分野で自信がありませんが、頑張ってみます。またご報告します。
by mai (2008-06-20 04:17) 

Ladybird

 いろいろ押し付けがましいことを書いてしまいました.申し訳ありません.
 BBCのアーカイブズはリースレクチャーだけでなく,たとえばニュースなども20世紀前半の歴史的な事件を伝える声なども残っていて,興味深く,のめり込んでしまいます.過去に好評だったラジオ番組などもあって,「モーツァルト効果」http://www.bbc.co.uk/radio4/science/mozarteffect.shtmlなどは私はMDに録ってBGMがわりに聴いています.
 さきにご紹介したページは,英語が聴き取りやすく,テキストも利用できるので,耳を慣らすのに良いのでないかと思ったものです.
by Ladybird (2008-06-20 19:47) 

mai

>Ladybirdさん
本当にありがとうございます。いままで、やはり読むのにかかる時間が格段に違うので主に(というよりよほど必要のある時以外いつも)日本のHP、ブログばかりみていました。新しい世界に招待していただけてたいへん嬉しいです☆ネットは世界中のものですものね。日本語で完結しているのは、確かにもったいないです。ビジネスが苦手ならば、音楽etc自分の好きな分野から入ればより楽しそうです。私は録画・録音機器類は超苦手なのですが、気に入ったのは録ったらいいですね。ありがとうございます。
by mai (2008-06-22 05:08) 

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