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市民の逃亡が引き金になった?!ベルリンの壁崩壊 [戦争と平和]

ある大学で「外国為替入門」という講義を受けました。私はさまざまな分野の中で最低と言っていいほど経済学の知識がなく「何のこっちゃ」状態。異次元の世界に入り込んだような気がしました。

憲法の成り立ちを描いた「日本の青空」という映画(良い作品です。お勧め!)の制作費は2億円だったそうです。各地で自主上映会が開かれていますが、いまでも制作費は回収できていません。確か残務は5000万円くらいだったと思います。また、君が代不起立による解雇反対の意見広告掲載が企画されていますが、半月ほど前に知人から得た情報では、「ようやく500万円ほど集まって、全面広告は無理でも何とか掲載できるメドが立ってきた」そうです。私たちがなけなしのお金を出し合っても、市民運動はそのレベルの世界です。

ところが、為替取り引きは全世界合わせると1日で3.2兆ドルに上るそうです。講義に出てくる例でも「A社がB社に100万ユーロ、B社はC社に50万ドル、C社はA社に70万ドル支払います」などと、目が回るような金額がポンポン出てきます。

財界は基本的に自民党支持、改憲賛成、自衛隊海外派兵賛成です。品川正治さんなど、例外はいらっしゃいますが、ごく少数でしょう。市民運動の涙ぐましさとは桁があまりにも違う圧倒的な財力です。いくら「お金ではない。正義の、良心の問題だ」と言っても、先日の岩国市長選でみるように、お金の力はやはりすごいものがあります。財力のあまりの違いに何だか目の前が暗くなったような気がしました。

そのなかで、一つ、明るい話を聞いたので、書いておきます。

それはベルリンの壁崩壊の簡単ないきさつです。ユーロが実現する道のりのなかで触れられた話で、当時から政治に注目しておられたり、その頃のことを書いた本を読んだことがある方はもっと知識がおありだと思いますが、私は初めて知りました。

1989年のベルリンの壁崩壊。冷戦構造のなかでソ連を始めとする共産圏の力が弱って体制を維持できなくなったということが大きな要因のようですが、直接のきっかけは東ドイツ市民の国外への逃亡だったそうです。国境を接しているので東ドイツには西ドイツメディアの情報が入ってきます。自国とのあまりの差に愕然とした市民のなかには、国境を越えてハンガリー、チェコに逃亡する人が続出しました。ハンガリー、チェコは、当時共産圏だったそうですが、それほど強固な信念を持っている国ではなく逃亡者に同情的で、逃亡者を東ドイツに送還することはありませんでした。

しかし、どんどんその数が増えてきて、思案の結果、西ドイツへ送ったそうです。つまり、東ドイツ→ハンガリー、チェコ→西ドイツという人の流れができました。その人数は、もう無視できないくらい大きなものになりました。そうこうしているうちに、東ドイツは政治的にも経済的にも保たなくなり、ベルリンの壁崩壊が起こります。

ここからは各国の思惑になるのですが、まずアメリカのレーガン大統領が東西統一歓迎の意を示しました。善意もあったかもしれませんが主に、ドイツ統一によるソ連の弱体化を狙ってのことです。西ドイツ側はソ連のゴルバチョフ大統領とは秘密会談を行い、多額の援助を行うことで合意を取り付けたそうです。イギリスのサッチャー首相はドイツ大嫌いだったそうですが、盟友のレーガン氏が先に賛意を表明したため、渋々了承。

残りはいまでもドイツと張り合っているフランスでした。フランスのミッテラン大統領は西ドイツのコール首相に二者択一を迫りました。ドイツを再統一するか、もしくはマルクを捨てるかという選択です。コール首相はドイツ再統一を選び、マルクを捨てることを約束しました。当時、マルクはヨーロッパで最強の通貨だったそうですが、マルクを捨てる=共通通貨を導入することが決まりました。その後、ユーロ導入への動きが急ピッチで進みます。

私はこういういきさつを全く知らなかったのでたいへん興味深かったのですが、一番勇気づけられたのは、共産圏の弱体化があったとは言え、東ドイツの市民の行動が引き金になったという点です。

東ドイツの場合は西ドイツへ逃げることによって変わっていったのですが、その他の方法でも時代の流れとうまく合致すれば、一人ひとりの力は小さくても大きな動きを起こせる可能性があるように感じました。それがどんな方法なのか、いつ行動を起こせば効果的なのか?その見極めが大切かもしれません。日本でも応用できることを信じて、希望を持ち続けていきたいです。

*ちなみに、大大苦手な経済の話ですが、講義後のテストでは100点でした(ちょっと嬉しい?!)


2008-02-13 22:54  nice!(4)  コメント(15)  トラックバック(37) 

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コメント 15

hm

maiさんおっしゃるとおり、金の力はすごいです。
 
 でも、金はなくとも人のひとりひとりの声も無視し得ないパワーを持つことがありますし、その努力を多くの方がやっている、すごいなあ、と思っています。

 さてさて、それに加えて、圧倒的な金の力も動かしてしまう方法を一緒に考えていきましょう。
 金だって人が動かすもの。うまく、いい方向に動かせないですかねえ?
 maiさんたちと一緒に知恵を絞れば何か策ができるかも。(って、今は私にも良策はないですけど、ひねり出そうではありませんか。)
by hm (2008-02-13 23:40) 

ayu15

100点はまじすごいです。
参考にどうぞ大嶽さんのです。http://blog.so-net.ne.jp/life-ayu/2008-01-26-2
by ayu15 (2008-02-14 01:04) 

東西南北

 人類の経済関係を分析し、認識する場合の基本は、労働と貨幣の関係です。経済の基本はそうなんですが、現実の経済関係は為替に象徴されているように貨幣と貨幣の関係があるわけです。これがいわゆる投機経済、バブル経済です。つまり、労働と貨幣の関係という実態経済からかけ離れた金融経済関係をどのように規制していくか、の問題です。

 これは別の角度からみると、勤労所得と不労所得の問題です。つまり、不労所得をどのように補足し、どのように規制していくかの問題が国内的にも国際的にも問題となっている経済情勢です。

 経済問題を基本から認識する場合に、マルクス経済学は本当に役に立つ科学です。労働価値と貨幣の関係から入り、賃金労働と剰余価値の関係へ進み、賃金労働と剰余価値の取得が過少消費をもたらし、恐慌になる。というのが資本主義経済の基本です。そこで、資本主義経済の過少消費を軽減する「福祉国家」が現代の国家の財政政策の基本のひとつになるのですが、新自由主義はこれを投げ捨てています。さらには、不労所得のギャンブル経済を庶民にまで拡大し、規制するどころか不労所得をあおる始末であり、生産と消費の矛盾を解決する所得分配機能も不全であり、不労所得を規制するどころか緩和していくという機能不全で、二重に誤った経済政策を実施しているのが自民党と公明党の経済政策の基本です。
by 東西南北 (2008-02-14 02:27) 

志村建世

トーピン税の話は、お聞きになりませんでしたか。為替取引に、一定の取引高税をかけて、途上国援助の財源にしようというものです。投機目的の為替取引を抑制する、一石二鳥の効果が期待できます。たしかEUは導入に前向きなのですが、アメリカなどの反対で、まだ実現していません。
by 志村建世 (2008-02-14 16:16) 

志村建世

追伸・hmさんのブログを見に行って、沖縄記念館のところへコメントを入れたかったのですが、投稿書式が出ず、方法がわかりませんでした。とりあえずトラックバックを一つ、入れさせていただきました。
by 志村建世 (2008-02-14 16:39) 

mai

>hmさん
勇気をありがとうございます!ぜひ気持ちの近いみんなで知恵を絞って、案を出し合っていきましょう。例えば、ちょっと前の記事でhmさんが取り上げられた、非軍事の国際貢献活動。これを「平和産業」にできないかなあ〜などと夢を見ています。誰がお金を出すか?国際機関か、とりあえず国民か。なぁ〜んて素人の一案ですが、ああでもない、こうでもないとやっているうちに、名案が出てくるかもしれませんね。

ところで、節分の記事にいただいたコメントに対してですが、「hmさんを鬼という人っていったい誰だろう、そんな人いるのかなあ?」と悩んでいます。仕事の鬼、法廷の鬼、もしかして検察官がhmさんを「鬼の弁護士」というのでしょうか??すみません。変な疑問でした〜(笑)。
by mai (2008-02-14 19:27) 

mai

>ayu15さん
テストと言っても、資料を見ていいというゆる〜いものでしたので、そんな大したことないんですよ。でも、学生時代に戻ったようで楽しかったです。ayu15さんの記事、拝見しました。いつものように力作ですね。コメントも入れました。また、いろいろ教えてください。
by mai (2008-02-14 19:58) 

ayu15

日記リストからお好きなのえらんでみてくださいね。
http://blog.so-net.ne.jp/life-ayu/2007-08-16-7
by ayu15 (2008-02-14 20:55) 

 ベルリンの壁崩壊は学生時代にリアルタイムで起きたことなので大体のことは知ってましたが、仏独間で通貨をカードにしての取り引きがあったというのは知りませんでした。道理でEUもユーロも進展が早かったわけです。
 こういうところ、ヨーロッパの国々というのは外交ってものがホントに巧みというかしたたかです。ダテに「斬ったはった」を千年単位で経験してませんわ。
by (2008-02-14 22:33) 

mai

>東西南北さん
詳しい解説、ありがとうございます。確かに素人の私から見ても、不労所得の多さ(東西さんのおっしゃる貨幣と貨幣との関係)はたいへん奇妙に映ります。
東西さんはすでにご存知だと思いますが、講義によると、世界で1年間の貿易額は20兆ドル弱というところだそうです。しかし、為替取引額は1日3.2兆ドル×休日を除いておよそ1年200日として、計算上、年間640兆ドルになります。
講師によれば、為替取引のうち、為替の本来の役割である貿易取引の決済はわずか数%で、ほとんどは証券投資(債権・株式投資)、その他投資(外貨預金、銀行融資等)だそうです。

講師はまた、現在の変動相場制は「制度なき制度」であり、ある意味で無法地帯だとも指摘していました。本当に素人考えなのですが、こういう実態を伴わない経済が続くのは人々にとって良いことなのでしょうか?ごく一部の不労所得として大金を手にする人を除いては、要するに自分たちが稼いだお金が吸い取られていく構造ではないでしょうか。

東西さんのおっしゃる通り、現在の日本とは反対に不労所得の増大を抑え(ゼロにするとは言いませんが)、所得を再分配する政策が必要なように思います。
by mai (2008-02-14 23:08) 

mai

>志村建世さん
「入門」と名前がついていたので、私のように「為替って1ドル○○○円とか言ってるあれらしいけど、実は何なのだろう?」というおそろしく初心者が多いのかと思っていましたが、経済学部出身の受講生もおられ、トービン税について質問してくださいました。

彼はトービン税について肯定的に考えていて、導入できないか?という趣旨だったのですが、講師は「理論では成り立つが、1国や一部の地域だけが実施すれば、税を嫌って資金が逃げてしまう。もしするとなれば、世界中ヨーイドンで導入しなくてはならないが、そのコンセンサスを得るのはとても難しいだろう」という悲観論でした。

志村さんがおっしゃるように、EUが前向きならば、あとはアメリカを説得できれば決して夢物語ではないですね。

いまhmさんのブログに行ってみました。入力はしていませんが、みんなのコメントの下に(ここと同じ感じです)投稿書式は出ているようでした。他の記事で私もコメントしたいものがありますので、また訪問してみます。志村さんも、よろしかったら、もう一度ご確認いただければと思います。
by mai (2008-02-14 23:21) 

mai

>shiraさん
コメント&niceありがとうございます。独仏の駆け引きの件は、講師が堂々と言っておられ、現地に滞在したこともある方なので、おそらく真実だろうと感じました。さすがヨーロッパは外交が練れていますね。それに比べて日本は・・・。天木さんがいつも嘆いておられるようにどうしようもなくお粗末ですね。日本の外務省職員をヨーロッパに派遣してビシビシ訓練してほしいくらいです。
by mai (2008-02-14 23:28) 

東西南北

 「経済学部出身の受講生もおられ、トービン税について質問してくださいました。彼はトービン税について肯定的に考えていて、導入できないか?という趣旨だったのですが、講師は「理論では成り立つが、1国や一部の地域だけが実施すれば、税を嫌って資金が逃げてしまう。もしするとなれば、世界中ヨーイドンで導入しなくてはならないが、そのコンセンサスを得るのはとても難しいだろう」という悲観論でした。」

 こんな話を聞くとムカムカしてくるのが東西です。大学で教育をする知識人が悲観論を学生に前で開陳するとはいくら知識があったもこういう人物は教壇に立たせてはならないです。居酒屋で愚痴をこぼして雑談の言論の自由に遊んでいればいいのです。本当に知識人の役割は特別に重いのが民主主義社会なのです。大衆へ真理・真実を自主独立して教育し、大衆と団結して資本、暴力、権力に立ち向かうのが民主主義教育であり、大学知識人の役割です。それを放棄するとは情けないどころか、ムカムカしてきます。大衆ならまだいいんです。誤解や無知基づくんですから。卑しくも知識人が確信犯的に悲観論を学生に回答するとは、なんたる無責任な態度。

 証券課税、金融所得課税を強化すれば税を嫌がって資金が外国へ逃げるという回答は、まさしく自民党と公明党、経団連が述べている態度そのものです。この場合の税制原則は不労所得としての金融所得を制限することであり、緩和して投機資金を呼び込むことではありません。この講師は、投機資金の呼び込みが結果するバブル経済の現実を見ているのでしょうか?
by 東西南北 (2008-02-15 01:50) 

mai

>東西さん
お気持ち、よくわかります。その場にいた私も同じ違和感を持ちました。
>本当に知識人の役割は特別に重いのが民主主義社会なのです。
そう思います。保育園から大学まで教員(保育者)の役割はたいへん重いですね。特に、最終学府である大学の責任は計り知れないと思います。だから政府側も必死になって、教育(教師)を管理統制しようとしているのでしょう。

この大学は先年、学長がいわゆる右寄りの人にかわり、それから講義の廃止、新設、そして個々の講義内容も少しずつ変わってきたように思います。以前は特別講義で湾岸戦争での劣化ウラン弾による奇形児のスライドなど見せてもらったりしたのですが、今でもそういう講義が残っているのでしょうか。心配です。
by mai (2008-02-15 10:39) 

東西南北

 会社で経営者に苛められて嫌なことがあるからって、家庭で子供に悲観論を語り、虐待をしながら、子供に立場上の「苦しみ」に理解を求める養育者は最悪です。やっぱりムカムカします。

 卑しくも大学知識人は保育所から高校までの教員を育てる「先生の先生の位置にある最高学府、最高教育機関です。

 財界、政府権力に苛められて陰湿な扱いを受けているからといって、学生に悲観論を教育し、学生に八つ当たりするような愚かな者は教壇に立つべきではない。学生、大衆の立場で自主独立して学生、大衆の防波堤となり、民主主義運動を組織しながら教育する教員こそ大学の教員としてふさわしい人間です。技術や能力が高いだけであれば、教育機関ではなく、研究機関で研究員をしとけといいたいです。これは議員にも当てはまります。
by 東西南北 (2008-02-16 00:27) 

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