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他国では小さな子どもをどう評価しているのでしょうか?(フィンランド編) [外国の素敵な教育]

前の記事で、保育園での節分の行事についての疑問について書きました。小さなできごとですが、大人が子どもたちをどうみているか?どういう観点で評価しているか?という一つの例ではないかと思います。

他国ではそのあたり、どうなのでしょうか?外国の教育関連の本(軟らかめの体験記が多いのですが)を読むのが趣味の私は、これまで読んだ本をもう一度読み返してみました。それぞれ、国によって違っているのですが、私の読んだ限りでは子どもを肯定的にとらえる、ややおおげさに言えばフレーベルのいう「万有在神論」が教育現場でかなりよく実践されているように感じました。

いくつか例を挙げてみます。

<フィンランド>
もちろん行ったことはありませんが、まずは大好きなフィンランドを取り上げます。どの本を読んでも感じるのですが、きめ細やかで一人ひとりを大切にする姿勢、知的で穏やかな雰囲気にはいつも感心します。ここではまず就学前教育での「評価」について紹介します。

フィンランドの子育てと保育―安心・平等・社会の育み

フィンランドの子育てと保育―安心・平等・社会の育み

  • 作者: 全国私立保育園連盟保育国際交流運営委員会, 藤井ニエメラみどり, 高橋 睦子
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本

フィンランドでは日本より1歳遅く、7歳で基礎学校に入学します。その前の1年間はエシコウルとよばれる就学前教育があります。「入学前の子どもたちを対象にした1年間の準備教育」で「一人ひとりの児童に必要とする入学準備を施し、だれもがスムーズに学校生活をスタートできるようにすること」が目標だそうです。

エシコウルは義務ではありませんが、フィンランドの教育課程全体と同じように無料であり、90%以上の子どもたちがこのシステムを利用しているとのことです。「就学前教育」というと「計算や読み書きを早期に教えるところを想像してしまいがちですが、実際、ワークブックを開いて机に向かう学習活動は1週間のうち2回、しかも1回につき30分程度のものでした」。

「重視されることは、集団生活のマナーを学び、そのなかで作業できる力を育てることです。つまり、人の話が聞けるようになること、いろいろな人と仲よくできること、自分のことは自分でできること、自分の意見が言えることなど、協調性、自主性、自立心を養い、子どもたちの就学へのステップアップを支援していきます」。

実際には何をしているかというと、日本でわが子が通っている保育園でいう「自由遊び」を徹底させたような時間が多そうです。
「昔の教師の宿舎を利用した築100年のフオバリ保育園の園舎内(まい注:保育園内にエシコウルがあり、午後1時までのエシコウルが終わったあと、必要な子どもは夕方まで保育園で過ごします)。各部屋や、玄関フロアなどを細かく区切り、それぞれのスペースに名前がつけられています。研究の部屋、建築の部屋、ゲームの部屋、物語の部屋、数字の部屋、車の部屋、人形の部屋、工作の部屋、ごっこ部屋など・・・。それぞれの部屋には、遊びに必要なさまざまなおもちゃや道具が用意されています。
 毎日のスケジュールのなかに組み込まれている自由選択遊びの時間が始まると、子どもたちは自分の行きたい場所を決め、フロアの壁に貼ってあるお部屋マップに自分の名前のついたクリップをつけ、各自移動していきます。各部屋に設定されている定員数と今あるクリップの数に注意しながら、子どもたちは、じょうずに分散していきます。
 親の私もわくわくするほどに楽しそうな園内からは、「強いられた勉強」を感じさせるものは何もありません」。

 こういうエシコウルで子どもたちをどう「評価」しているかを、フィンランド在住の日本人である藤井ニエメラみどりさんの文章を引用して紹介します(上記のカッコ内も彼女の文章です)。
 「就学前教育では、一人ひとりの児童に合わせた支援を基本に掲げるため、その教育プログラムに親も積極的にかかわることが求められています。年に2回、エシコウルの開始直後と、卒園前に個人面談が行われます。児童1人につき1時間、面談には両方の親と子ども自身の参加が求められ、グループ担任の先生との四者間での話し合いがもたれました。
 1回目の面談では、泰斗の日ごろのようすから、得意な点と不得意な点を見つけ出し、この1年間で、どのように前者を伸ばし、後者の部分を支援していくかが焦点となりました。先生は、ピスパラ保育園からの早期教育計画にもとづく泰斗の今までの成長記録にも目をとおしていたので、それも加味しながら的確に、今後1年間の泰斗への支援のしかた、目標のおき方を提案してくれました。泰斗自身がその場に同席したことは、1年間の目標を彼自身が意識するうえで、とてもいい機会になりました」。

「そして卒園前の面談では、泰斗を話し合いの中心にして、エシコウルの開始時はどんなことが不得意で、1回目の面接でどんなことを目標にしたのかをふり返るところから始まりました。先生は、泰斗にこの1年間の一つひとつの出来事を思い出させながら、「前にはこんなことが苦手で困っていたのに、この1年間であなたは、こんなにもできるようになったんだよ。ほんとうにすごいね」と成長したところを具体的にとことんほめていきます。人との比較ではなく、過去の自分と今の自分を見つめたときに、焦らず自分で自分をステップアップさせていってほしいという先生の考え方が手に取るようにわかりました。
 ついつい、自分の子どもを他の子どもと比較して見てしまうこともある私。はっとさせられた瞬間でした。また、このとき、不得意な部分を克服し大きく成長した自分に、泰斗自身が気づいたことは、このあとの基礎学校入学への大きな自信につながったようです」。

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私も含めて日本人は、「子どもを誉めすぎること≒甘やかしてしまって、わがままで自分勝手な人間に育つ」という思いこみが何となくあるように感じます。でも子どもを適切に誉めて肯定的にとらえることは、(国際比較でも日本の子どもたちがずいぶん低い)自尊感情を高め、ものごとに対する明るく前向きで楽観的な姿勢を育てることにつながるように思います。

まだまだ親初心者の私には、わがままになってしまう誉め方と自尊感情を高める誉め方の違いが十分にわかっているとは言えません。試行錯誤の毎日ですが、子どもが自分を大好きになり、友達や家族も好きで、人生を楽しく明るく生きていけるような感情の基礎を作る手助けをしたいと努めています。

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エシコウルでは子どもが同席して話し合いが進みますが、もっと小さな子どもの場合、保育園ではどういう「教育計画」が立てられているのか、紹介します。

著者の藤井ニエメラみどりさんの次男である瑛之(えいの)くんが3歳で保育園に入園した直後の面談についてです。面談は通常、年に2回あり「今回の面談の所要時間は1時間。事前にいただいた質問表には、次のような面談の焦点となる事項があげられており、家庭で話し合っておくことを薦められていました。私たちは、先生といっしょに、家でのようす、そして園での瑛之のようすを、この質問表に沿ってゆっくりと情報交換していきました。そこから瑛之がとくに支えを必要としている点を取り上げたうえで、今後の目標を掲げ、そのために具体的にどのように家庭と園とが連携して対応していけるかを話し合いました」。

● お子さんにとって、身近な存在、たいせつな人はだれですか。
● 家でお子さんは保育園についてどういうふうに話していますか。
● 日常の園生活に関係して何か気になることや質問はないですか(着替え、衛生、食事、外遊び、昼寝)
● お子さんの発達のことで何か気になることはありますか(言語、運動能力など)。
● お子さんは新しい状況下におかれる際、どのように適応していますか。恐怖感をもっていますか。
● お子さんは、とくにどんなことに喜びを感じますか。
● お子さんのうれしさ、悲しさはどのように表れますか。
● 帰宅後の友だちはいますか。保育園ではどうですか。
● お子さんはどのように他の子どもと交わっていますか。集団のなかにおける役割、位置は?
● どういう状況のとき、お子さんは助けを求めにきますか。
● けんかのときにどのようにふるまいますか。
● どんなもので、だれとよく遊んでいますか。
● お子さんの園生活のようすについて、とくに毎日伝えてほしいことはどんなことですか。
● 家庭と園とのあいだで、どのような連携の形を望んでいますか。
● あなた方にとって子育てのなかでどんなことがたいせつですか。園になにを期待しますか。
                                     (一部抜粋)

「この面談の内容は、先生によって子どものファイルに記録、保存され、今後継続していく瑛之版早期教育のたいせつな一資料になります。来学期の終わりの面談では、また先生といっしょに、この計画結果をふり返り、次の学期に向けて新たな目標設定を行っていきます」。

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私は自分の子どもについて、誰かとこんなに丁寧に話し合ったことはありません。自治体が実施する健診(1カ月健診から始まって3歳6カ月で終了)には毎回参加していましたが、ごく普通に育っているためか、保健師さんとの面談はだいたい5分くらい。しかも、子どもが大勢いるフロアの一角で慌ただしい感じでした。

保育園は親が何か申し出たら聞いてくれる姿勢はあるのですが、特に決まった面談はありません。ここでも、ごく普通に過ごしている(らしい)わが子については、先生方と親密に話し合った経験はありません。

いろいろな面でたぶん「不安の強い親」ではない私は、わが子について上のような面談がいまどうしても必要とまでは思いません。しかし、そういうシステムがあって、受けてくださいと誘ってもらえればそれはとても嬉しいですし、親にも子どもにもプラスになる点は多いと思います。このきめ細かさと、押しつけるかたちではなく、それぞれの親子を尊重しながら話し合ってもらえる姿勢というのは、たいへん羨ましいです。

そして、さすがフィンランド、福祉大国と思わせられるのが、企業の駐在などで一時的に住んでいる外国人親子にも、こうした面談が保障されていることです。

「市の通訳リストに名前を載せている夫は、こうした面談の席に日・フィン語通訳として呼ばれることも多々あります。現在、海外派遣などによる海外からの外国人家族が増えているなか、問題となってくるのはこの大事な話し合いの席での保護者と先生とのことばの壁です。ところがその際、園側が市に通訳の依頼を行ううえに、その通訳料も市が負担するため、保護者はことばの心配もなく、この計画に参加することができるのです。こうした点からも、市の位置づける早期教育計画の重要性がひしひしと伝わってきます」。

外国人、子ども、女性、障がい者・・・・こういう社会的に弱い地位になりがちな人が幸せに暮らせる社会。それは普通の人にとってはなお、快適で過ごしやすいはずです。弱者切り捨てと言われがちな日本と比べて、本当に羨ましく、なおかつ参考になる国だと思います。

どちらかと言えば「静」のフィンランドに対して、明るく陽気な「動」の国の例としてオーストラリアとスペインの教育事情の一端を書こうと思いましたが、フィンランドが予想以上に長くなってしまいました。今回はフィンランド編として、次の記事でオーストラリアとスペインを紹介します。


2008-02-09 13:01  nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(1) 

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東西南北

 フィンランド:「次男である瑛之(えいの)くんが3歳で保育園に入園した直後の面談についてです。面談は通常、年に2回あり「今回の面談の所要時間は1時間」

 日本:「自治体が実施する健診(1カ月健診から始まって3歳6カ月で終了)には毎回参加していましたが、ごく普通に育っているためか、保健師さんとの面談はだいたい5分くらい。しかも、子どもが大勢いるフロアの一角で慌ただしい感じ」

 保護者と先生が一緒になって子供を育てている環境は子供にとって幸福です。家庭でもそうですが、父母が喧嘩してバラバラ、子育ては母親あるいは父親にまかせっきりでバラバラでは子供は不幸です。家庭では父母が協力して、そして、地域では保護者と先生が連帯して、保護者と保護者が連帯して子供の教育環境を保障することが子供の幸福です。

 「先生は、泰斗にこの1年間の一つひとつの出来事を思い出させながら、「前にはこんなことが苦手で困っていたのに、この1年間であなたは、こんなにもできるようになったんだよ。ほんとうにすごいね」と成長したところを具体的にとことんほめていきます。人との比較ではなく、過去の自分と今の自分を見つめたときに、焦らず自分で自分をステップアップさせていってほしいという先生の考え方が手に取るようにわかりました。」

 「重視されることは、集団生活のマナーを学び、そのなかで作業できる力を育てることです。つまり、人の話が聞けるようになること、いろいろな人と仲よくできること、自分のことは自分でできること、自分の意見が言えることなど、協調性、自主性、自立心を養い、子どもたちの就学へのステップアップを支援していきます」

 「子どもを誉めすぎること≒甘やかしてしまって、わがままで自分勝手な人間に育つ」という思いこみが何となくあるように感じます。でも子どもを適切に誉めて肯定的にとらえることは、(国際比較でも日本の子どもたちがずいぶん低い)自尊感情を高め、ものごとに対する明るく前向きで楽観的な姿勢を育てることにつながるように思います」

 これが自尊感情、自己肯定感情を育てるということですね。そして、子供が友達に対してもこのような態度で接しているかどうかが評価の基準だと思います。つまり、最悪な態度は「あいつは俺よりも劣っている」と比較し、見下す態度です。あるいは、「あいつは俺より優れている」と比較し、妬む態度です。

 他方、良い態度は、友達が優れていれば「なんでそんなにできるの?教えてくれ」と積極的に頼む。頼まれた友達は「お前もできるようになるまで努力したらいいよ」と教えてあげる。逆に、黙って困っている風な消極的な友達がいたら、気配りして「どうしたんや?」と積極的に声をかけて、自分で解決できるように助けて、励ましてあげる。

 要するに、自分と他人の能力を比較して「劣等感、優越感」を持つのではなくて、相互に利他献身していく態度が人間らしい態度を評価していく必要があると思います。

 「研究の部屋、建築の部屋、ゲームの部屋、物語の部屋、数字の部屋、車の部屋、人形の部屋、工作の部屋、ごっこ部屋など・・・。それぞれの部屋には、遊びに必要なさまざまなおもちゃや道具が用意されています。」

 子供の天国ですね(笑)このような子供の要求に基づいた環境の中で、上記のような人間らしい相互に利他献身する態度を育てていくことが教育の指導原理だと思います。これを徹底すれば、どれだけ子供を誉めて評価しても「わがまま」な子供にはならないでしょうね。


 
by 東西南北 (2008-02-09 23:13) 

まいさん

生きるって
とっても辛いことですね!
コメントありがとうございました。

子供は自分の所有物でないのに
飼育する義務だけが政策担当者として
いつまでもついてきます。

独白を自分の所で述べました。
読んで下さい!
でも
それとて一部です!
人が人を裁いたり
人が人を教えるなんて思い上がりなんでしょうね・・・!

でも
いま現実に子供が目の前にいます。
この子のために出来るとところまで
頑張るのが親なんですよ!

確かに疲れてます!
でも
この子のために
大声を上げて頑張ってます!

maiさん!
これ削除しても良い!
悩みながら頑張ろう!
間違っているかも知れない
でも
自分のこどものために頑張れば
必ずみんなも良いこと有るはずだよ!
頑張ろう!
by まいさん (2008-02-10 20:24) 

mai

>東西南北さん
コメントありがとうございます。ご指摘いただいたように、子どもと親、子どもと保育者、子ども相互の間で人間的な関係をきちんと築いていれば、「誉めすぎ」とか「わがままになる」という心配なく、子どもを全面的に肯定できると考えるようになりました。

それぞれの遊びの部屋が作られていて、どの部屋でどう遊ぶかは子どもたちの自主性に任されています。どの子もきちんとバランスを取ることができるようになるそうです。素晴らしいと思います。

>kimera25さん・・・ですよね
ブログのコメント拝見しました。辛い立場に立っておられるようですね。あまり無理をなさらないでください。

「まず子どもを幸福にしよう。すべてはその後に続く」。これはイギリスの教育者、ニイルの言葉で私も目標にしています。時々私が書いている「きのくに子どもの村学園」はニイルの思想と実践を取り入れている部分がかなり多いです。こういう理念で教育している現場があることにたいへん勇気づけられます。

生きていくことは辛い・・・鬱の気がある私も時にそう思います。でも、子どもの存在(自分の子どもだけでなく、日本のそして世界の)は生きていく励みになります。kimera25さん、時には自分のこころと体をいたわってあげてくださいね。あまりご自分を責めないで!
by mai (2008-02-10 20:44) 

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