救急医療の危機 [福祉国家へ]
あってはならないことが起こってしまいました。以前から、日本の救急医療は綱渡り状態だったと思います。救急指定病院でも常勤医では手が回らず、大学や他の病院から非常勤医を雇って、夜間救急のみ診療を任せる病院も多かったです(その病院に不慣れなので、医療の質は落ちる危険性があります)。医師の負担が重くなりすぎて、今回のように受け入れを断ったという話もしばしば聞きました。常勤医が頑張って当直している病院では、翌日も疲れた身体で通常勤務をしなくてはならず、潜在的に医療ミスの危険がつきまといます。当直医がそのまま、夜間に受けた急患の主治医になるシステムの病院も多く、その場合は何日も帰宅できない日が続いたりします。
そういうなかで、表沙汰にならない医療ミス・・・厳密に言えば医療ミスまではいかなくても、医師が疲労していない時であったらできていたことが、うまくできないことは、かなりあったようです。医師を始めとする医療スタッフの義務感、使命感で何とかやってきた状態でした。でも、それももう限界のようです。1時間も搬送先が決まらなかったなど、まさに非常事態です。産科、小児科の危機は広く知られるようになりましたが、それに比べて認知度がいま一歩である救急医療の危機はもっと叫ばれるべきです。
報道で知っている方が多いと思いますが、掲載します。
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<救急搬送拒否>交通事故の79歳女性死亡 福島 11月14日20時35分配信 毎日新聞
福島市内の県道で11日夜に起きた交通事故で負傷した79歳の女性が、救急搬送の際に市内4病院から受け入れを断られ、病院搬送に約1時間かかっていたことが分かった。女性は事故の約6時間後、外傷性脳挫傷で死亡した。福島消防本部は「すぐに病院で治療を受ければ助かったかもしれない」としている。
同消防本部や県警福島署によると、現場近くの無職、菊田ミツ子さんが11日午後8時過ぎ、ゴミ捨てのため道路を横断中、乗用車にはねられ救急車が出動した。搬送の際、県立医大付属病院など市内4病院に延べ8回受け入れ要請をしたが断られた。事故の約1時間後に市内の民間病院が受け入れたが、菊田さんは12日午前2時過ぎに死亡した。菊田さんは搬送中意識があり、呼びかけに反応していたという。
福島県保健福祉部は同付属病院が受け入れを断った経緯を調べている。別のある病院は「たまたま他の急病患者がおりICU(集中治療室)が満床だった」と説明した。【今井美津子】
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最近になって報道されるようになりましたが、日本の人口あたりの医師数は世界約190カ国の中で63位、OECD加盟30カ国中27位と、かなり低い水準にあります。また、高騰しているとしきりに言われてきた医療費もOECD30カ国の平均を下回っています。日本福祉大学教授の近藤克則氏によれば、「厚労省が出している推計値では、医療費が増えて国が滅びるという雰囲気だ。しかし、医療費を抑制しない場合ですら、2015年の数値は現在のドイツの水準よりも低い。さらに、このままでは2025年にはGDPの12%を超え、持続不可能であるかのような話だが、これは現在の米国の水準よりも低い」とのことです。
助かるかもしれなかった人を亡くしてしまう。心ある医療者ならば耐えられないことです。搬送を断った病院が怠慢だったという可能性は低いと思います。マンパワーの絶対数が足りないのです。何としても財源を確保して、救急医療の充実を図るべきです。
医療問題は、日本でも深刻。まず、医師の数が足りない。自民党と公明党は偏在だといいますが、東京都・徳島県は人口比で都道府県の中で一番、医師の数が多い。10万人に250人程度。最低は埼玉県で10万人に160人程度。偏在が事実であれば東京戸と徳島では医師の数は十分なはずである。しかし、東京と徳島の病院の現場は医師不足であり、勤務時間が異常な事態になっている。先進国の国際水準では1000人に3人つまり、10万人では3000人の水準なのだ。ところが、日本では1000人に2人つまり、10万人に対して2000人であり、全国の医師数は25万人である。要は、国際水準で見れば12万人は不足しているのであり、偏在の問題ではない。自民党政権が医学部の定員を減らしてきた政策の責任である。公明党はその自民党を後ろで支えている姑息な宗教政党である。
医師数の不足は医師の労働条件が最悪にあることにより、患者への悪影響も不可避である。過労状態の医師が勤務して患者さんを手術し、診察している危険性は指摘するまでもない。
診療報酬制度のマイナス最改定により、医療機関への予算を削減したことも労働条件を最悪にしている。医療機関は利益を確保しようとし、労働条件へツケを回すからである。
国民健康保険料の値上げも深刻であり、患者の窓口負担の増大も深刻である。さらに、保険が適用される医療の対象を狭めてくる混合診療の解禁も医療のアメリカ化への道である。
結論はすべて自民党が中心となって進めてきた政策であり、その背景には財界とアメリカ政府・資本、そして公明党・創価学会がいるということである。日本国民はこれらの悪の勢力と対決している野党と連帯して政権交代を実現し、社会生活を向上させていく必要がある。
by 東西南北 (2007-11-14 23:54)
maiさんへ
この問題は、カネでは解決できない問題が、実は最大の原因です。しかも、これらは国や自治体がクリアすることができない、非常に厄介な問題です。
予算でクリアできるのは、救急救命センターの設置等の救急体制の「ハード整備」と、医療器具等の調達、そして「都市部でなくても収入が確保できる」という医師・看護師の報酬です。
これらがmaiさんが理想とする状況に整備されれば、改善はできないこともないですが、できたとしても「幾分か解決した」というレベルでとどまります。
実は、問題の根幹というのが、以前TVドラマにあった「白い巨塔」にもあったように「医師たちの学閥と名誉」なのです。実際は、あのドラマよりもドロドロしているとさえ言われています。
大学病院の教授・助教授と公立病院の医師は、師弟関係にあります。母校の教授からの要請を断れるほど政治力のある医師はあまりいません。
また、医師も「名誉」は当然欲しいわけですから、「医療行為」よりも「医療研究・論文」に力を入れたいというのが、特に若い医師には多い。この論文等で得られた名誉は、後になって報酬に返ってきます。
第一、医師の卵は親が医師というのが多いですから、目先の報酬がなくとも親からの援助で十分ですから、こうなると、若い医師は、目先の給与に関心がなく、「大学に残って研究したい」というのが多く、いくら国や自治体が設備を整備し、報酬を上げたとしても、モチベーションが上がらないのです。
このために、救急医療については、都市部を除いては「不足」が生じる。当直医の過労も問題となっていますが、予算での政策のみでは「幾分か」解決したぐらいとなってしまう、ということです。
従って、予算や政策も含めて(予算を増やすな、とは私は主張しておりません)、抜本的な、それも「学問の自由や職業選択の自由との調整」にまで踏み込んだ改革を行わないと、私は、こうした問題は解決できないだろうと思っています。
一応、ご参考までに。
by wakuwaku_44 (2007-11-14 23:55)
心が痛みます。救急搬送とは違いますが、堺の患者公園放置事件も日本の医療制度改悪の犠牲者でしょう。(置き去りにした職員も)
生活保護制度や介護・医療等々改善しなければならない仕組みはこの国に山ほどあります。政争に明け暮れている時ではないと思います。
国民が安心して暮らせる制度作りが必要なのでしょう。そう言うと、財源が無いと言われるのですが、財源だけの問題ではなく、人を大切にする国づくりを本気でするかどうかだけです。
談合利権偽装国家は真っ平御免です。
by 女衒の辰 (2007-11-14 23:59)
東西南北氏のコメントで、間違いがあるので、訂正しておきます。
>診療報酬制度のマイナス最改定により、医療機関への予算を削減したことも労働条件を最悪にしている。医療機関は利益を確保しようとし、労働条件へツケを回すからである。
ということは、医療機関には起こりえません。完全に医療制度を知らない人の、しかも主観と思い込みだけの言動です。
診療報酬は、いろんな要素で細分化されて定められていますが、医師数や看護師の削減は、診療報酬減額の原因となります。そして、医師と看護師は「売り手市場」ですから、当然、医療行為を行う人員の報酬部分を削減できる病院は僅少であり、よって、「利益を確保しようとし、労働条件をツケを回す」というのは、完全に間違いです。
東西南北氏は、自分の主観と思い込みだけで発言している部分が、あまりにも多すぎます。この問題にしてもそうですが、国際紛争においてもそうです。メディア・リテラシーについては、論理矛盾さえ生じています。
私を排除するための言動は、東西南北氏自身の自爆を招くという事実をわきまえ、もっと謙虚になりなさい。
by wakuwaku_44 (2007-11-15 00:09)
wakuwaku_44先生の御託に反論するまでもないと思いますが、診療報酬のマイナス改定が労働条件を悪くするのは当然のことです。出鱈目をコメントしないようにしてください。自民党と公明党が診療報酬規定を減額改定したことで患者さんへしわよせがいくんです。それを医療関係者の労働条件の悪化で穴埋めするから過労で現場は大変なんです。結局、診療報酬をマイナス改定した自民党と公明党が実現したものは患者さんと医療関係者の労働条件の悪化なのです。この事実を認めない wakuwaku_44 先生が主観と思い込みなのです。
by 東西南北 (2007-11-15 00:34)
>診療報酬制度のマイナス最改定により、医療機関への予算を削減したことも労働条件を最悪にしている。医療機関は利益を確保しようとし、労働条件へツケを回すからである。
この東西南北さんのコメントは間違いないと判断しています。診療報酬のマイナス改定は病院の経営を圧迫します。医師・看護師の報酬はそれほど下がらないにしても(しかし、勤務医の平均給与は大手マスコミや金融機関の社員よりも低いです。しかも、年齢・経験によってほとんど上がりません)、雇い入れる人数を法的制限のギリギリにして、一人当たりに科せられる労働量はどんどん増しています。
以前の記事にも書きましたが、勤務医の平均労働時間は週70時間に及んでいます。厚労省の統計ではもっと短いのですが、それは例えば患者さんの家族への説明が必要で、家族が夜になって病院へ到着するまでの待機時間を入れていない・・・など少なめに見積もっているという話でした。
医師の大学志向については、現在はかなり薄れています。学位よりも専門医取得を目指すという流れです(もちろん、両方取ろうとする人も多いですが)。学位を目指す医師でもそのために大学に戻るのはせいぜい数年で、学位取得後には市中病院に勤務するという道が一般的です。大学に残るのは、講師、准教授、教授というコースを目指すごく一握りです。ですから、医師の絶対数はやはり不足しています。
女衒の辰さんがおっしゃるように、政争や戦争に明け暮れている場合ではありません。「人を大切にする国づくり」というミッションを忘れず(このミッションという言葉は前鳥取県知事の片山さんが、実に的確に使っておられます・・・詳しくは津久井さんのブログに)、肝に銘じてやっていかなくてはならないと思います。財源はとりあえず、450兆円に及ぶと言われる米国債を必要に応じて売っていったらどうでしょうか?(アメリカの利益を自国民の幸福よりも優先させるような政権だったら、もういりません)
by mai (2007-11-15 09:52)
>医師・看護師の報酬はそれほど下がらないにしても(しかし、勤務医の平均給与は大手マスコミや金融機関の社員よりも低いです。しかも、年齢・経験によってほとんど上がりません)、雇い入れる人数を法的制限のギリギリにして、一人当たりに科せられる労働量はどんどん増しています。
全国平均で按分すると、確かに数字上ではそうなります。
ただ、これは、大都市部分の「医師余り」の病院を含めると、そうなるわけであって、全体的にそうだ、というわけではありません。
病院経営が苦しくなって、真っ先に削減されるのは、事務職です。事務職を直接雇用から派遣に移行するとか、あるいは給食を外注にするとか、そういうことで経費削減は対処していますが、医療行為に関わるところでは、コストカットは「しない」というより「できない」と言った方が表現は正しいでしょう。
この方面でのコストカットは、診療報酬という「収入面」での減少も招くことになりますから、利益という面でみても、東西南北氏の発言は正確ではありません。
>以前の記事にも書きましたが、勤務医の平均労働時間は週70時間に及んでいます。厚労省の統計ではもっと短いのですが、それは例えば患者さんの家族への説明が必要で、家族が夜になって病院へ到着するまでの待機時間を入れていない・・・など少なめに見積もっているという話でした。
それは事実です。そのことまでを否定しているものではありません。
しかし、私が言っているのは、その「原因」が、診療報酬の改定よりも、むしろ別のところに要因がある、ということであって、maiさんのご発言を否定しているわけではありません。
そのあたりを誤解なさらないように、お願いいたします。
by wakuwaku_44 (2007-11-15 12:22)
連続投稿、申し訳ありません。事実と異なることを述べられた上で、私の発言を全否定されましたので、抗弁という意味で、投稿させていただきます。
>wakuwaku_44先生の御託に反論するまでもないと思いますが、診療報酬のマイナス改定が労働条件を悪くするのは当然のことです。出鱈目をコメントしないようにしてください。
デタラメは東西南北氏です。第一、東西南北氏の結論に至る仕組みやロジックの説明がまったくありません。制度を知った上でコメントしていると予測できない以上、東西南北氏の私に対するコメントは不当極まりないものであり、このようなコメントは無条件で撤回するのが道義的責任であります。
デタラメをコメントしなようにしてください、とは、私が東西南北氏に対して言うことであって、東西南北氏が私に対してコメントする言葉ではありません。
このこと、東西南北氏に厳重注意いたします。
by wakuwaku_44 (2007-11-15 12:26)
「第一、東西南北氏の結論に至る仕組みやロジックの説明がまったくありません。」
意味不明ですね。事実を指摘するのに論理など不要でしょ?詭弁はやめなさい。結局、診療報酬制度のマイナス最改定により、医療機関への予算を削減したことも労働条件を最悪にしている。医療機関は利益を確保しようとし、労働条件へツケを回すからである、というのは事実なんですよ。
wakuwaku_44先生がいくら「論理」や「制度」を持ち出しても診療報酬が減額されているわけですから、労働条件は悪化するんです。現実見てますか?
それと、医師の偏在などというのも事実ではないですから撤回した方がいいですね。東西が上で挙げた通り自民党の医学部定員管理の失敗で全国的に医師は不足しております。なお、看護士の不足も偏在ではありませんのであしからず。都市部の病院でも医師と看護婦は不足しております。
その責任はどの政党にあるんでしょうか?論理ではないですよ。事実です。先生、お答えください。
by 東西南北 (2007-11-15 17:58)
>WAKUWAKU_44さん、東西南北さん
お二人とも3コメントいただきましたので、この記事についてお二人の議論はここまでとさせてください。あとは私も含めて各自、考えを深めましょう。
by mai (2007-11-15 19:09)
maiさんへ
嘘を放置しておけないので、一言だけ。
>意味不明ですね。事実を指摘するのに論理など不要でしょ?詭弁はやめなさい。結局、診療報酬制度のマイナス最改定により、医療機関への予算を削減したことも労働条件を最悪にしている。医療機関は利益を確保しようとし、労働条件へツケを回すからである、というのは事実なんですよ。
これは事実ではありません。
診療報酬制度の仕組みを調べてからコメントするように。この仕組みを知れば、東西南北氏のコメントはすべて「ロジックが成立していない」のが明らかになります。
ロクに調べもしないで、私を排除したいがためだけにコメントするのが反社会的行動であるということが、まだこのご仁にはわからないようです。
by wakuwaku_44 (2007-11-15 20:39)