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附帯決議の不思議 [憲法について]

国民投票法が成立してしまいました。数の論理から考えて、成立は不可避だったかもしれませんが、私たち一般国民からみても、あまりにも不備が多い法律と言わざるを得ません。私の個人的考えとしては、いま急いで国民投票法を作る必要性は感じないが(安倍氏にとっては最重要かもしれませんが)、どうしても作りたいのであれば完全に中立的なものでなければならない・・と思います。

ところで、このブログを読んでくださっている方はもうご存知だろうと思いますが、18もの附帯決議がついたきわめて異例の法律ということで、市民運動初心者の私は附帯決議って聞いたことあるような、ないようなというレベルなので、ネットで少し調べてみました。

附帯決議とは、「国会の委員会が法案、予算案などの採決に当たり、所管する省庁に対する運用上の努力目標や注意事項を盛り込んだ決議が行われる場合がある。採決の直後動議により提出され、決議されれば所管の閣僚らが今後の取り組みなど所信を述べるのが一般的。審議の過程で野党側が求めた修正事項のうち、法案化されなかった部分について、政府に善処を求める内容が多い。決議は政治的、道義的拘束力はあるものの、法的拘束力はない」とのことです。

そこで、国民投票法の附帯決議を見てみると(津久井さんのブログから転載させていただきます)

日本憲法の改正手続に関する法律案に対する附帯決議

                         平成十九年五月十一日
                         参議院日本国憲法に関する調査特別委員会

一、国民投票の対象・範囲については、憲法審査会において、その意義及び必要性の有無等について十分な検討を加え、適切な措置を講じるように努めること。

一、成年年齢に関する公職選挙法、民法等の関連法令については、十分に国民の意見を反映させて検討を加えるとともに、本法施行までに必要な法制上の措置を完了するように努めること。

一、憲法改正原案の発議に当たり、内容に関する関連性の判断は、その判断基準を明らかにするとともに、外部有識者の意見も踏まえ、適切かつ慎重に行うこと。

一、国民投票の期日に関する議決について両院の議決の不一致が生じた場合の調整について必要な措置を講じること。

一、国会による発議の公示と中央選挙管理会による投票期日の告示は、同日の官報により実施できるよう努めること。

一、低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないよう、憲法審査会において本法施行までに最低投票率制度の意義・是非について検討を加えること。

一、在外投票については、投票の機会が十分に保障されるよう、万全の措置を講じること。

一、国民投票広報協議会の運営に際しては、要旨の作成、賛成意見、反対意見の集約に当たり、外部有識者の知見等を活用し、客観性、正確性、中立性、公正性が確保されるように十分に留意すること。

一、国民投票公報は、発議後可能な限り早期に投票権者の元に確実に届くように配慮ずるとともに、国民の情報入手手段が多様化されている実態にかんがみ、公式サイトを設置するなど周知手段を工夫すること。

一、国民投票の結果告示においては、棄権の意思が明確に表示されるよう、白票の数も明示するものとすること。

一、公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の規制については、意見表明の自由、学問の自由、教育の自由等を侵害することとならないよう特に慎重な運用を図るとともに、禁止される行為と許容される行為を明確化するなど、その基準と表現を検討すること。

一、罰則について、構成要件の明確化を図るなどの観点から検討を加え、必要な法制上の措置も含めて検討すること。

一、テレビ・ラジオの有料広告規制については、公平性を確保するためのメディア関係者の自主的な努力を尊重するとともに、本法施行までに必要な検討を加えること。

一、罰則の適用に当たっては、公職選挙運動の規制との峻別に留意するとともに、国民の憲法改正に関する意見表明・運動等が萎縮し制約されることのないよう慎重に運用すること。

一、憲法審査会においては、いわゆる凍結期間である三年間は、憲法調査会報告書で指摘された課題等について十分な調査を行うこと。

一、憲法審査会における審査手続及び運営については、憲法改正原案の重要性にかんがみ、定足数や議決要件等を明定するとともに、その審議に当たっては、少数会派にも十分配慮すること。

一、憲法改正の重要性にかんがみ、憲法審査会においては、国民への情報提供に努め、また、国民の意見を反映するよう、公聴会の実施、請願審査の充実等に努めること。

一、合同審査会の開催に当たっては、衆参各院の独立性、自主性にかんがみ、各院の意思を十分尊重すること。
右決議する。

何と、私たちが問題としていた、最低投票率、公務員・教育者の地位利用、マスメディアでの有料広告の公平性などが、全部入っているではありませんか。素人考えですが、そういうことをはっきりと決めるのが「法律」ではないのでしょうか?法的拘束力のない「努力目標」??のような玉虫色の位置づけにして、結局、何も実行されなかったとなっても国民は何一つ文句は言えないということでしょうか?

普通は野党の注文でつける附帯決議が法案提案者の方から提出されたのもきわめて異例とのこと。何が何でも早く法律を作りたいという一心でしょうか?もう理解できないことばかりです。この附帯決議を一歩でも二歩でも進めて、もっとまともな法律に作り替えることはできるのでしょうか?どなたか詳しい方がいたら、教えていただきたいです。

ところで友人に尋ねたら、2日ほど前までの毎日新聞や赤旗では、この附帯決議について触れていなかったそうです(少なくとも友人は気がつかなかった)。マスメディアはこの問題について、もっと世の中に広く訴えるべきではないでしょうか。これだけ附帯決議がついているということは、法案作成者自身が「この法律には不備がある」と告白しているのと同じことでしょうから。


2007-05-14 22:58  nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(0) 

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tamara

まいさん、こんにちは、タマラです。
国民投票法案は通ってしまったけど、そうそう簡単に改憲まで行くとは限らない、と思ってこれからも頑張りましょう!
これからの三年間が大切ですね。「タマラの世界」とは別に「ブナの森とふくろう」というブログを作りました。社会問題について、まいさんのようにきちっとした文章ではありませんが気楽に書いていきます。「タマラの世界」はそれなりに必要性があるかと思っています。(政治に関心のうすい人にもたまに大事なことを伝えていくブログとして。)
まいさんの記事は本当にいつも丁寧に書き込んであって感心しています!
by tamara (2007-05-15 21:45) 

さき

まいさん、こんにちは。
教育についてはがんばってくれている「毎日」ですが、憲法に関してはダメみたいです。
上層部なのか憲法担当の方たちなのかわかりませんが、「親民主改憲派」じゃないのかな?という感じです。

昨日の社説はかなり長かったですが、「与党と民主党はこの法案でほとんど合意に達していたのに安倍首相のせいで壊れた、それで民主党もへそを曲げて最後まで歩み寄らなかった」って感じでした(怒。

記事をどうやって書いていったらいいかなあと考えていて、先日初めてアクセス解析というものをしてみたのです。そしたらブログにきてくださる方たちのうち3割くらいは検索サイトで探してくださっていることがわかりました。毎日必ずどなたかは新しい方が来てくださっているということがわかったので、ブログをつくってるということだけで、とりあえず「伝わる可能性」はあるんだなと嬉しくなりました。

やれることをコツコツやっていこうと思います。
がんばりましょうね~!
by さき (2007-05-16 11:25) 

mai

タマラさん、こんにちは。いつも訪問ありがとうございます。新しいブログ拝見しました。タイトル素敵ですね。内容もそうだ、そうだ、と同感することばかりです。2つのブログはたいへんでしょうけれど、とても有意義だと思います。頑張ってくださいね。私は政治、経済、法律の知識が乏しいのがもどかしいです。今回の附帯決議も何それ?っていう感じでしたから。本当に素人考えの文章で恥ずかしいのですが、国民の一人として、子を持つ母として、黙ってはいられず、毎日更新とかハイペースではできませんが、自分のペースで頑張っていこうと思っています。ところで、タマラさんも体調崩しておられたのですか?私も過労(というほど働いてませんが)、ストレスとカゼが一緒になったような感じで、今日はぼんやりと過ごしていました。一番のストレス源はタマラさんと同じく「政府」です(怒)。
by mai (2007-05-16 17:16) 

mai

わあ〜、さきさん、いらっしゃい。ブログからメッセージ差し上げようと思いながら、↑に書いたように体調崩してしまって、ぐずぐずしています。Abeストレスのせいも大きいと思います。さきさんのブログは情報の宝庫、図書館のようなものです(私のは気まぐれメモみたいなもの^^;)。ぜひぜひたくさんの人に訪問してほしいです。さきさんの「伝える力」は大きいと思いますよ。私も政治トピックはもちろんですが、きのくに、ケストナー・・・など、さきさんのおかげで新しい世界が広がりました。さきさん伝授の「毎日新聞作戦」。早速実行して、一昨日からとっています。確かに昨日の社説はどっちつかずな感じだったかしら。でも、法律については詳しく解説してたように思いました。しばらくこの作戦でやってみます!お互い、持ち場で頑張りましょう。
by mai (2007-05-16 17:25) 

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