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「きのくに子どもの村学園」に行ってきました(追加) [きのくには楽しい]

きのくにっ子が一般社会に出た後のことについて、(私は経験者でも知人がいるわけでもありませんが)学園長の堀さんの著書や学校を見学したときの感触から私なりに思ったことを書いてみようと思います。

が、その前に、「沖縄戦で軍による住民自決強制はなかった」という文科省見解について・・・。
私は沖縄に詳しいわけではありませんが、10代のころに読んだひめゆりの物語や沖縄で訪れた戦跡でみたコメントなどから、自決強制はあったという常識で今まで生きてきました。それがひっくり返るというのは、どのような「新事実」が見つかったのでしょうか??
私の夫は沖縄に住んだことはありませんが、沖縄大好きのいわゆる沖縄フリークで、何回か沖縄に行き、本やネットでいつも沖縄関連の情報を収集しています。そこで、彼に尋ねてみました。答えは一言「(自決強制は)あったに決まっている」。ちなみに、彼は私ほどリベラル派ではなく、事実のみを重んじる理系思考をする人です。

たとえ言葉で「自決しろ」と言わなくても、教育によって戦争を美化し「捕虜になるくらいなら自決しろ」と教え込んでおいて、極限状況で「防空壕から出ていけ」と言ったり、手榴弾を手渡したりしたのならば、それは自決を強制したのと同じではないでしょうか。突き詰めれば、軍というよりも国全体の責任だと言えるでしょう。
従軍慰安婦問題と言い、どうして自国の歴史をそれほど甘く甘く捉えたいのでしょう。そんなことで、自分たちのプライドが満足するのでしょうか。本当に勇敢な人とは、事実ときちんと向かい合い、肯定するべきは肯定する、反省するべきは反省すると、きちんと判断できる人です。また、自分や自国に対しては厳しすぎるくらいでちょうどいいと思います。

生存している方が少なくなっているいまの時代になって、政府や軍を肯定する見解ばかり出してくるやり方は納得できません。従軍慰安婦の問題のように、アメリカからクレームがつくとすぐに訂正するくらい根拠が薄弱なのに、自国民に対しては強権的に出る。歴史を自分たちの満足のいく方向に書き換えようとしているとしか思えません。そして、戦争を肯定する風潮をじわじわと作り出そうという意図も見えます。国民のこころのなかにこれ以上介入するのはやめてもらいたいです。

あまりにも納得できなかったので、つい長めに書いてしまいましたが、今日のテーマは「きのくに」です。hmさんからコメントをいただいた、卒業後に感じる一般社会との落差についてです。
コメント欄にも書きましたが、私も最初はその点を心配していました。いろいろな子がいる公立校と違って、ある意味「純粋培養」的になってあとでしんどいのではないか・・と。しかし、堀さんの本などに紹介されている卒業生のコメントなどを読み続けていくうちに、その不安は少なくなり、いまではあまり心配していないのです。

では、どんなコメントがあったかというと・・・(本を人に貸していたり、時間的なことから正確な引用ではないことをご了承ください)
・きの中を卒業して公立高に入学した子が「同級生がふわふわして幼くみえる」と言っています。これはきのくにのモデル校であるサマーヒルを80年代に卒業した日本人の女の子も「日本に帰って同世代の子と話すと幼く感じる」と書いています(「サマーヒル少女日記」)。
・見学に来た大人の方から「中学生が成熟した大人のように感じる」という感想がよく聞かれるそうです。私も中学生はしっかりしている印象を持ちました(小学生、特に低学年の子はかわいいです♪)。
・プロジェクトでは社会問題をよく取り上げるのですが(特に中学以上で)、「いまの社会にこういう問題があることを知って、私はこれまでのように毎日無邪気に笑って過ごすことができなくなりました」と書いていた子がいました。
・卒業生のコメントとして「きのくにでは人間関係の勉強の連続でした」とありました。
・お子さんがきの中に通っているお母さんのブログを拝見すると、祖父母から「○○はしっかりしたなあ。大人のようだ」と誉めてもらったと書いておられました。
・たぶん公立小から転校してきた感じの小学生が「自分できめられるから、かんたんだと思っていたけど、きめられた事をするよりも、はるかにむずかしかった」と書いています。その難しいことを何年間も続けるわけですね。
・サマーヒルでの調査では(だいぶ以前の小規模な調査ですが)、15、6歳まで数年以上サマーヒルで過ごした卒業生はその後の適応に苦労した人がとても少なかったそうです。2〜3年の在学や10歳前後までしかいなかった子の方があとで苦労したという割合がずっと高かったというデータがあります。

そう、きのくにでは、むしろ、こころが大人っぽくなるのが早いようなのです。これにはいろいろな要因があると思いますが、毎日が自己決定の連続であること、プロジェクトで社会問題を深く考察すること、プロジェクトそのものがチームでの活動であり、何をするか、どう進めるか・・・などすべてのことを大人も含めて全員で相談しながらやっていくこと、全校集会や寮生活でディスカッションしたり異なる意見をまとめる経験を積むことなどでしょうか。
縦割り編成なので自然に小さな子を助けるようになるでしょうし、特に中学生以上は小学生のお兄さん、お姉さん役として、ミーティングで司会をしたり、小さなもめごとの仲裁をしたりという役割を期待されます。そういうなかで、下級生に対して優しく振る舞ったり、みんなの意見を調整したりする能力が身につくのではないでしょうか。

きのくにに子どもを入学させる家庭ということで、公立校よりは似た傾向の子が集まるのでしょうけれど、それでもいろいろな子がいて、合う子も合わない子もいるでしょう。そのなかで、公立校よりずっと密な人間関係を結んでいっているのです。もちろん、一般社会のような「理不尽さ」はとても少ないと思いますが、人と人との接し方、利害調整法、説得法などはとても多く経験し体得するに違いありません。

そういうわけで、私はきのくにっこが一般社会へ出た時への不安はほとんどなくなりました。ただ、窮屈さは感じるかもしれないなあ・・とは思っていますが、自由な教育を受けた子どもたちが、この社会を優しく住みやすいものにしていく大きな力を持っていることを信じています。


2007-03-31 17:33  nice!(1)  コメント(7)  トラックバック(0) 

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おおくにあきこ

まいさん、こんばんは! 沖縄戦のこと、本当、ヘンですよね。でも、これが1年、2年とたつうちに、強制があったという文が削除されたことすら風化してしまうのでしょうか? 生存している方が書いても、「本当?」と思う人も出てくるのかもしれません。もうすでにいるのかもしれません。だから、今、批判されるのを承知で変えようとしているのでしょう。風化させたくないですね。
by おおくにあきこ (2007-04-03 23:14) 

hm

きのくにっこの話題について。

 まいさん,詳細な報告(サマーヒルの報告等も)ありがとうございました。勉強になりました。
 
 時々,「小学校,中学校で学ぶべきことは,本当は教科の勉強ではなく,『理不尽でもいやいやでも何かに従うこと』である。そうでないと,社会に適応できず不幸になってしまう。」と大マジメに言う人がいますが,私はこの発想が嫌いです。つまり,「従順な一兵卒」をつくるのが学校,それになりきれれば幸せ,という,気持ち悪~い思想がそこに含まれているからです。突き詰めると,個人の持つ知性の輝きの否定です。

 と,こういう逆の極端の例を出したのは,きのくにっこの学校卒業後の「外」への適応についてですね。
 
 まいさんの報告にあるとおり,目の前の現実社会にそのまま(何も考えずに)入ってゆける能力ではなくて,現実社会と向き合って問題を解決する能力そのものが育てられているから最終的に余り心配はない,というところ,私も深く頷きました。
 教育改革についてですが,学校の多様化というのが,序列主義の下でのしょうもない直線的ランク多様化ではなくて,こういうきのくに学園のような特色を持った学校が多様にうまれてゆく,創造性いっぱいの豊かな教育環境を実現するものになるように知恵を尽くしていきたいものですね。
by hm (2007-04-04 13:13) 

mami

まいさん、はじめまして。さきさんのブログから飛んできました。
『自由教育が世界を変える』というブログを書いている、きのくに保護者のmamiです。

すばらしい見学報告記、感動して読ませていただきました。きのくにの保護者でも、こんなに深くきのくにを見て、感じて、わかってくださってるかた、そう多くはないかもしれません。ほんとうにうれしかったです。

そして、私も今の教育や社会の動きを憂えているものです。きのくにだけがよければいい、というのでなく、子どもが自分自身の生き方をできる自由、それを大切にしてくれる親や学校がどんどん増えて、たくさんの子どもたちが、幸せに育っていくことを望んでいます。

それから、きのくにの中学生が大人びて見える、ということについてですが、私が思うに、まず、きのくにでは、小学生のときにたくさん遊んだり、体を動かしながら学んで、子ども時代を十分堪能しているから、いつまでも子どもっぽくしている必要がないんじゃないかな。

多くの子どもたちは、塾だ、宿題だと、親は口うるさいし、子どももいつも何かに追われている気分で、子ども時代を十分堪能できていないような気がするのです。

それとやはりご指摘の通り、密度の濃い人間関係で、いろんなトラブルを乗り越えたり、ミーティングを経験し、上級生の様子を見たりするなかで、自然と自分の考えを持ち、きちんと発言できるようになるのだと思います。

ああ、ちょっとおじゃましようと思ったのに、また熱くなって、すみません。とてもうれしかったものですから・・・。
まいさんのブログ、私のほうで紹介してもいいですか?
by mami (2007-04-05 00:30) 

mai

みなさん、丁寧なコメントありがとうございます。
拙い記事にするどいコメントをたくさんいただき、ちゃんとお返事できるかしら?とちょっと不安になっていますが(笑)。

>おおくにさん
従軍慰安婦さんの件といい、当事者が何人もとうてい嘘とは思えない生々しい証言をしているのに、「書面として証拠がない」、「補償金ほしさだ」、「政治的に利用された」などわけのわからない理屈をつけて拒否しようとする態度は、国民として本当に恥ずかしいです。
昨日、文科省に抗議の電話を入れました。私の方が主に喋ってしまって担当の人はあまり話してくださらなかったのですが、例の岩波書店と大江健三郎さんの裁判は影響しているようです。でも「それは一箇所の問題であって、沖縄各地でたくさんの証言があるのをすべて否定するのですか?」と問うと「う〜ん」という感じでした。見解をあまりはっきり言わないという方針をとっているようにも感じました。
知人の職場で公務員の20代女性は「従軍慰安婦」という言葉も聞いたことがなかったそうです。若い世代ではもうそこまで来ているのかと驚きました。風化させてはなりませんね。私の伯父は戦死(訓練死)しています。戦争の話を親たちから聞いて育った私たちの世代が頑張らなくては・・・と思っています。

>hmさん
>「小学校,中学校で学ぶべきことは,本当は教科の勉強ではなく,『理不尽でもいやいやでも何かに従うこと』である。そうでないと,社会に適応できず不幸になってしまう。」と大マジメに言う人がいますが,私はこの発想が嫌いです。

私も全く同感です。「個人の持つ知性の輝き」・・・本当にいい言葉です。それを引き出すお手伝いをするのが教育だと思います。
ところで、hmさんも私も基本的に明るい性善説に立っていますね。(話題は全く違いますが)夫婦別姓問題でNHKの番組に関連してネット上で討論した時にも感じたのですが、性悪説を信じている人がけっこう多いことにちょっとびっくりしました。別姓問題だったら「同姓にしないと家族としてのモラルが低下する」とか「人間はそんなに強いものではないから、同姓にすることによって家族としての一体感、責任感が保たれる」などという意見がかなり多くて、そういう方とはなかなか意見が交わらないことを実感しました。

教育問題もそれに似たところがあり、「子どもは放っておくとろくなことにならないから、教育によって悪いところを矯正する」という考えの方はかなり多いようです。と言うか、いまの政府の教育再生会議などはその視点に立っていますよね。でも、本当の自由を得たとき、子どもがどれだけ輝けるか、そして保守的な人が言うようなヘンなことにはならないどころか、大人が思いつかないような素敵なアイデアで個性豊かに過ごせるか・・・きのくにはそれを証明していると思います。ある方のブログで拝見したのですが、きのくにの手作り卒業式(「卒業を祝う会」というのかな)は本当に暖かく感動的です。

中学生から大人びて見える理由について、きのくにっこお母さんのmamiさんがより適切にコメントしてくださっていますので、ごらんくださいね。

教育現場での創意工夫を最大限尊重して、政治は縁の下からそれを支えるような方向に変われば、全国の教育環境はずいぶん豊かになると思います。

>mamiさん
初めまして。ありがとうございます。と言いましても、実は私はmamiさんのブログの愛読者なのです。いつかごあいさつしたいと思いつつ、「私など、まだまだきのくに初心者だし・・」と恥ずかしくてためらっていました。
私がきのくにを知ったのも、mamiさんのブログを拝見したのも、さきさんのおかげです。話はそれますが、さきさんには本当に感謝しています。

>まず、きのくにでは、小学生のときにたくさん遊んだり、体を動かしながら学んで、子ども時代を十分堪能しているから、いつまでも子どもっぽくしている必要がないんじゃないかな。

なるほど〜。さすが、きのくにっこのお母さんですね。納得しました。確かにいまの日本では子ども時代が不完全燃焼になりやすいでしょうね。そう言えば、堀さんの本で「するだけのことはし尽くしたので卒業します」という意味の卒業生のコメントを読んだ覚えがあります。本当にいい学校ですね♪

それと本文で紹介させていただいたおじいさん、おばあさんから「大人っぽくなったな」と言われたというコメントはmamiさんのブログを参考にさせていただいています。息子さんがミーディングの司会をされている様子を見て、大人の顔になったとおっしゃったのでしたね(表現正確でなかったらごめんなさい)。
もっと早くごあいさつしなくてはならないのに、遅くなって失礼しました。

堀さんの本を読んで(もっとたくさん読みたいから出してくださらないでしょうか)、きのくにに一回見学に行っただけなので恥ずかしいのですが、よかったらいくらでも紹介してください。
これからもよろしくお願いします。きのくにレポート、本当に楽しみにしています☆
by mai (2007-04-05 09:54) 

mami

maiさん、
>もっと早くごあいさつしなくてはならないのに、遅くなって失礼しました。

なんて、とんでもございません!読んでくださってるだけでうれしいです。それから、きのくに大好きな保護者ですから、どうしても視点が偏ってしまうかもしれません。なので、「私など、まだまだきのくに初心者だし・・」などとおっしゃらず、そっちょくなご意見、感想などいただければ、私の考えも深まるので、どうぞよろしくお願いいたします。

それから、その前にコメントされているhmさま、

実は今日、私のブログでmaiさんのブログに触れた際、hmさまのコメントを一部転載させていただきました。でも、これって、よく考えたら、法律違反?いけないこと?なのかも・・・と不安になってきました。もし、よくなければ、すぐにその部分を削除いたしますので、ご連絡いただけますか?本来なら、直接ご連絡すべきなのですが、hmさまのブログを拝見しましたが連絡方法がわからなかったので、こちらに書きました。ご無礼をお許しください。
by mami (2007-04-06 22:47) 

hm

mamiさん
 まったく問題ないですよー。
 引用されているmamiさんの趣旨(意図)にも賛同です。
 ブログも拝見させていただきました。ためになります。
 もっともっと子どもたちの学びはよいものに出来る、それを信じることって本当に大切だな、と思います。
 これからもよろしくお願いします。
by hm (2007-04-07 22:16) 

m in otsu

こんにちは。今日、県議会議員選挙に行きます。きのう、報道関係の仕事に就いている知人に何年かぶりに会って素朴な疑問を投げました。新幹線新駅問題で、どうしてJR東日本が県民の意向を無視して、この件を進めようとしているのかって。私は、これまでの調査費やプラン作りにかかった費用などが回収されていないからという、それさえpayできれば、片付くものと考えていたけれど、むしろそんなことより、ただ同然で駅を作ってもらってのぞみなんかでスピードアップしたダイヤを正常化するための、時間調整用の駅ができることのオイシサが1私企業としての手放したくない理由だと知人は指摘しました。そして、反目しあう県民と、税金の使い道について、反・未来志向の推進派の様子に、高みの見物を決め込んでいると言うのが、JR東日本の企業姿勢なんだと、わたしは認識を新たにしました。これって、これまでもらった新駅反対派のチラシには載ってなかったと思うのですが、みんなに知ってもらいたいなと思ってmaiさんのブログへ送ってみました。
ps 日本がアメリカの1州にという表現がありましたが、大嫌いな中川某のいうような形かどうかはべつにして、中国へアメリカは日本を預けちゃいたいというのが今の政治状況ではないでしょうか。日本はもはやビジネス上もまったく魅力がなくなっていること、日米安保に縛られて、日本を守る軍事支出がもうお荷物になっていること、それは中東の泥沼化による膨大な軍事支出からくる財政悪化が絡んでいることでしょうが、そういったことが、従軍慰安婦の問題をアメリカが政治的に大きく取り上げて日本と距離を置く意向を示したという、そんなところに見えるような気がします。わたしとしてはどちらにしろ、歓迎です。アメリカという国家、日本という国家、国家という恐ろしきもの、国民主権の意味、もう一度、とらえなおし、未来のひとたちへ渡せるせかいをリ-クリエイトする、あらたな苦しいけれど、希望がそこに生まれるように思うのです。
どこかの属州になるというのは歓迎しませんが。(属州になることについてのおそろしさは、広義だろうが狭義だろうが、安部某・中川某たちにも十分理解が・むしろ、一般の人たちが理解する以上に、できると思うな。)ながなが、ごめんなさい。元気でがんばりましょうね!
by m in otsu (2007-04-08 11:09) 

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