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メディアが先か? 読者が先か? [メディアの姿勢]

教育基本法関連で大切な情報(法案そのものの持つ危うさ、国会前に何千人も集まるほど盛り上がっている反対運動)がメディアで取り上げられていない、あるいは非常に消極的報道であったということは、たくさんの方がブログで書いておられるし、私も以前の記事でしっかりグチをこぼしています。

そのことについて、やはりずっと引っかかっていて、「参院選や憲法問題でもメディアがこういう姿勢だったら、本当に困るなあ」と悩み続けていました。

先日、長年商売をしていて、世の中の酸いも甘いも噛み分けた(と私には見える)苦労人の方にお会いしたので、その疑問をぶつけてみました。するとそんなの当ったり前と言う調子で「そりゃあ、商業マスコミですから、広告あってなんぼのもんです。広告主の企業や財界に不利なこと、書くわけありませんがなー」というお返事。その時は「なるほどなあ〜」と半分納得しましたが、後で考えると「そうかなあ?」という気持ちもあって、何となくもやもやしています。

というのは、私は新聞社そのものではありませんが、系列の出版社に勤務した経験があって、その時の体験とのギャップが大きいからです。

出版社で月刊誌の編集をしていたのですが、一言でいうと「自由そのもの」でした。もちろん編集会議があって、そこで企画が通らないと記事は書けないのですが、その方針は1.事実であるかどうか? 2. 読者に受ける(喜んでもらえる)かどうか? ということが重視されその条件をクリアすれば、まず間違いなく企画は通りました。

技術系の雑誌だったのですが、「これを書け!」「これはタブーだ!」というプレッシャーはなかった(少なくとも私は感じなかった)ですね。広告収入がメインの雑誌だったのですが、「編集」と「広告」とは全く別部門で切り離されていて、相互干渉はなかったです。

一度、業界最大手企業の商品について批判的な記事を載せて(私が書いたのではありませんが)、その企業が怒って、広告を引き上げたことがありました。でも、全くおとがめなし。心なしか、編集長は「ジャーナリスティックでインパクトのある記事を書いたじゃないか」とむしろ嬉しそうな表情だったことを思い出します。

いろいろ書きましたが、要するに、私の経験したマスコミ業界はかなり自由で、ジャーナリストの心意気もあって、そう悪いものではなかったのです。

そこへもってきて、今回の(ずっとウォッチしている人にとっては前からかもしれませんが)、朝日を始めとする不気味な沈黙。いったい何なのでしょうか?政治がらみと私のいた技術系とでは事情が違うのでしょうか??

可能性としては、1. 反対した事実がなかった:これは明らかに違いますよね。中川政調会長など産経のインタビューに答えて「ごく一部の日教組などの組合員が国会前で阻止行動をした」という趣旨のことを話していますが、これこそ事実に反するのであって、市民・保護者、学生、学者、法律家など多彩な人々が反対運動をしていたのは(私は東京には行けませんでしたが)「改正」情報センターのHPで実施された「参考人・公述人として徹底審議を求める」署名の職業欄を見るだけでもわかります。何万人という人がその良心にしたがって反対していました(私だって一市民・保護者です)

2. 教基法について掘り下げた記事や反対運動について書いても読者が興味を持たない:これは春の国会の段階ではそうだったようです。どなたかに聞きましたが、大手紙の記者が「教基法について書いても受けないんだよねえ」と言っていたという情報もあります。でもそれは小泉氏が教基法改正について特に重点を置いておらず、郵政民営化ばかり叫んでいてメディアもそちらを向いていたことが大きいのではないでしょうか。少なくとも、安倍内閣になって9月、10月、11月と日がたつにつれて、反対意見は目立つようになり、国民的議論になり始めていました。その時点できちんと書いていれば、読者は春とは比べものにならないくらい興味を持ったはずです。

となると、残るはやはり、意図的無視なのでしょうか? 1. 国会の議席数から「もう成立は動かない」と読んで、記者の興味がなくなりニュースバリューはないと判断してしまった 2. 広告主(=企業)や財界に遠慮して自主規制した 3. 裏で何らかの圧力が働いた などの可能性が考えられます。

私の会のニューズレターを読んでくれた読者の一人は「日本の新聞にもアメリカ資本が入り込んできているから、新自由主義・国家主義というアメリカに有利な法案の欠点を書けなかったのではないか」という意見をくださいました。

ここまで読んでくださった方、結論の出ない話でごめんなさい。
ただ、ジャーナリズムの末端にいたことのある人間として、自分が経験した自由で伸び伸びした雰囲気と今回の押し殺したような報道とがどうしてもつながらなくて、少し考えてみました。

最後になりますが、イラク問題の講演会に行った時、質疑応答の時間に同じような疑問が出されました。「戦後のイラクの実情についての報道はとても少ないが、何か圧力がかかっているのか?」というフロアからの質問に対して、講師の方は「TVの視聴率調査でもイラクの話題になるとガタッと落ちるのですよね。やはり国民の関心が低いということが一番の原因ではないでしょうか。もっと知りたい! 報道してください!と声を上げてください」とおっしゃっていました。

上の仮説のどれであったとしても、市民がメディアに対してきちんと意見を言うこと。たとえ微力に見えても、それが重なれば大きな力になるかもしれないという希望は持っています。


2006-12-30 00:16  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 

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